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「嫌われ者」モウリーニョの真意。 

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原田公樹

原田公樹Koki Harada

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2005/01/13 00:00

「嫌われ者」モウリーニョの真意。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 「モウリーニョって、なんでそんなに嫌われてるの?」と聞かれたのは一度や二度じゃない。プレミアリーグの首位をひた走る、チェルシーのポルトガル人指揮官、ホセ・モウリーニョのことである。

 ある日本のサッカー雑誌の編集者によれば、モウリーニョについての原稿を英国人記者に依頼すると、必ず痛烈に批判した内容のものになるという。もちろん英国の新聞でもときどき批判はされるが、なんせ首位を独走中だから連日批判ばかりするわけにもいかない。英国人記者たちは、そのうっぷんを日本向けの記事で晴らしているのかもしれない。

 確かにモウリーニョは好かれるタイプの人間ではない。記者会見をすっぽかしたり質問にまともに答えなかったりするから、プライド高き英国人記者の癪に障るのだ。先日も試合後の記者会見でフランス人記者がフランス語で質問すると、モウリーニョはすらすらとフランス語で返してみせた。会見場の英国人記者たちがボソボソと「あいつフランス語もしゃべれんのか? 何言ってんだ?」とささやき合っているのがおかしかったが、モウリーニョに関する記事に悪意に満ちたものが多いのは、正等な批判というよりも心情的な部分に寄るところが大きいのだろう。

 モウリーニョには少しトルシエっぽいところがある。記者を小馬鹿にして、嫌われようが叩かれようがお構いなし、という姿勢だ。だが根本的に違うのは、トルシエは虚栄心が丸見えだったのに対し、モウリーニョはわざと悪役を演じているフシがあるところだ。

 一例を挙げよう。英国人記者が「もしチェルシーがアーセナルからタイトルを奪うことを阻むような存在があるとしたら、それは何か?」と質問すると、モウリーニョは仏頂面をして「そりゃ我々よりもいいチームに決まっているだろ。でも現時点では、われわれよりもいいチームはないけどね」と答えたのである。

 もしこれがイングランド代表のエリクソン監督だったら、もう少し気の効いた答えをしただろうし、先ごろサウサンプトンの監督に就任した記者会見の達人ハリー・レドナップ監督なら、同じ答えでも、きっと笑いを誘っていただろう。これがイングランドの監督のやり方だ。ところがモウリーニョは見も蓋もない正論を吐き、記事にしにくいジャーナリスト泣かせの返答をするのである。   

 それはなぜか。恐らく彼は自分がヒールとなってメディアの批判を集中的に浴びることで、選手を守ろうとしているのではないだろうか。知識は豊富で、計算が早く、非常に頭の切れる男ゆえのなせる技だ。

 昨季、ラニエリ監督が率いていた頃のチェルシーは、活躍できなかったベロンや得点が取れないクレスポが批判されていたし、ダフのような選手は出場機会が少ないことに公然と不満を漏らしていた。成績に関しても期待はずれに終わっていたが、ラニエリは記者から好かれていたため、メディアから叩かれることは少なかった。

 成績の面でもキャラクターの点でも前任者と好対照の「悪役」モウリーニョは、批判されればされるほど、きっと「しめしめ」と思っているに違いない。妙に強気で滅多に笑わない理由は、その辺にあるように思えてならない。

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