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ヤンキースは大丈夫か? 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2008/12/26 00:00

ヤンキースは大丈夫か?<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 今年のストーブリーグはここまで、ヤンキースの独壇場になっている感がある。オフの最大イベントであるウィンター・ミーティングで、CC・サバシア投手とAJ・バーネット投手を獲得したと思ったら、クリスマス直前になって、他チームとの交渉が難航していたマーク・テシェイラ選手をも横やりを入れるような格好でかっさらってしまった。

 日本では今回の大型補強を「不況知らず」などと形容しているが、果たしてそうなのだろうか。すでに深刻な経営危機に陥っているGMが、ヤンキースとの来シーズンのスポンサー契約を打ち切ることを発表するなど、ヤンキースも確実に世界同時不況の影響を受けているはずなのだ。個人的には今回の補強のやり方はあまりに“丼勘定”に思えて仕方がないのだ。

 どのチームもストーブリーグに入る前に、来シーズンの構想をまとめているし、年俸総額もはじき出しているはずだ。ヤンキースもその構想に従って選手補強を行っているのは間違いないだろう。だが今回の同時不況はご承知のように日を追うごとに悪化の一途を辿っており、その構想通りに収入を確保できるのかさえ疑わしい状況になってきているのではないだろうか。ウィンター・ミーティング期間中のことだが、ヤンキースのド派手な札束攻撃を見かね、マーリンズのデビッド・サムソン球団社長が「あまりに無責任すぎる」と批難していたが(だが後日ヤンキースに謝罪する発言を行っている)、決して的外れではないだろう。だが球界関係者の反応は「他チームが太刀打ちできない予算を持つヤンキースへのひがみ」とか「どんな影響があるのか現時点では誰もわからないのだから、決してやりすぎだとは思わない」──というのが主流だった。こういった球界内の反応すら、自分には“KY”に思えてならない。

 確かにヤンキースは、来シーズンから待望の新球場に移転する。これまで1990年後半からメジャーリーグで起こった新球場建設ラッシュは、観客動員の増加以上にラグジュアリー・スイート増設による大幅な収入源確保が最大の理由だったといっていい。新ヤンキー・スタジアムでも、このラグジュアリー・ボックスを増設しており(19から56)、大幅な収入増が期待できる。さらに旧ヤンキー・スタジアムはそのまま保存し、当面は観光施設として見学ツアーを行う予定で、こちらも間違いなく大きな収入源になるはずだ。

 一方で、ラグジュアリー・ボックスはシーズン契約が一般で、大抵は個人ではなく企業が購入している。新球場1年目という事もあり、すでにラグジュアリー・ボックスは完売しているだろうが、それを購入している企業自体が日々疲弊していっているのだから、今後キャンセルがでないという保証は1つもないはずだ。さらに不況が長引けば、GMのようにスポンサーから撤退する企業も間違いなく増えてくる。決してヤンキースだって安定財源を抱えているわけではないのだ。

 他チームに目を転じれば、数チームが球団職員の解雇を発表しているし、MLB自体も人員削減を行っている。さらに他スポーツに至っては、女子プロバスケットのWNBAでリーグ開設から強豪チームだったヒューストン・コメッツが経営破綻したばかりか、新たな買い手が見つからずチームを解体せざるを得なくなった。また1987年から着実に成長を続けてきたアリーナ・フットボール(AFL)は今月になって、2009年シーズンの休止を明らかにしている。さらにアメリカで最もマーケティング力を誇るNFLでさえも、人員削減を断行しているという事実をみれば、どう考えてもヤンキースの行動は時代に逆行しているのではないだろうか。

 そもそも世界同時不況の発端となったリーマン・ブラザーズの経営破綻直後から、経済評論家の中にはプロスポーツ界への影響を懸念する発言がでていた。CNNに出演していた某評論家の予想では、将来的には米国の4大プロスポーツ(NFL、MLB、NBA、NHL)の中でも経営破綻するチームが出てくる可能性が十分にあると警鐘を鳴らしていた。その最初が、最もマーケティング力の低いNHLになるだろうとも訴えていた。

 現状を見る限り、現在が不況の底だと考えている人は誰もおらず、来年になればもっと厳しい経済状況になるだろうと考える人がほとんどだ。既述した球界内にある「現時点でどんな影響があるか誰もわからない」という考え方は、確かに真理であろう。だが一方で、「来年以降も確実に収入源が確保できるとは思えない」と考えないチームはないと断言していいだろう。

 果たしてヤンキースは本当に大丈夫なのだろうか?

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