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代理人は選手の敵か? 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2005/03/08 00:00

代理人は選手の敵か?<Number Web> photograph by AFLO

 「同僚よ、目を覚ませ。代理人たちによる大きすぎる権力の行使を阻止しよう」

 オランダ代表でミランに所属するMFシードルフの一声で、サッカー界でも代理人業を見直す動きがでてきた。

 代理人は、近年のサッカー界に不可欠な存在だが、その実態は常に闇に閉ざされている。

  「代理人は、選手にとって、いわば身内に属する人物。しかし、中には私腹を肥やすために選手を利用している人もいる」と、シードルフは言う。

 プレーに専念するだけの選手たち。代理人は、そもそも選手では手に負えない面、すなわちクラブとの交渉を専門家として請け負っている。置かれた状況に不服を抱く選手の側に立ち、解決策を探るのが、代理人の主な仕事。今回のように、顧客である選手から、「手玉に取られている」と言われては、代理人も冷静を装ってはいられない。

 世界的に知られている代理人・ブランキーニ氏は、「サッカーの移籍市場の大きさが“絶大な権力”と解釈させる」と、シードルフの「告発」を曲論とする一方で、「第3者の言いなりにならず、自覚を持って決断するべき」と、選手側の責任にも言及する。

 同様に選手協会の顧問であり、大学で法律を学んだMFペッキア(シエナ)も、「少なくとも、選手は署名する契約の内容をしっかりと把握する必要がある」と、選手が自覚を持つことを促す。実際のところ、ペッキアも指摘するように、若い世代の選手はビッグクラブと契約する便宜を代理人に図ってもらうべく、有名な代理人と契約を結びたがる傾向があり、それが結果的に代理人に手玉に取られるケースの増加に及んでいる。

 代理人として長いキャリアを持つパスクワリン氏は、「質より量」と、近年の代理人業の有様を嘆いている。同時にパスクワリン氏は、法律にも精通する者が代理人の職に就くべきと説く。代理人に「学士」を義務付ける「学士制度」の導入を主張するが、選手から代理人になるケースも多いことから、それは現実的に不可能。仮に、学士制度が取り入れられたとしても、ブランキーニ氏が指摘する「己のことだけを考える代理人が存在する」問題は解決されるとは言い難い。

 それでは、本当に代理人は選手を利用しているのだろうか?

 「私腹を肥やす代理人」そして「代理人の絶大な権力」を生み出すのが、業界内における「独占」である。

 ユベントスのモッジGMの子息アレッサンドロ氏が運営する代理人企業「Gea World」は、開設から数年間で、なんと300人のサッカー選手と監督を顧客に持つ大企業に成長した。今回の騒動では、業績ナンバー1のそのGeaが槍玉に上がった。1990年に国会で決議された「アンティトラスト」に基づき、代理人とクラブの間で、Geaの「独占」を非難する声が高まっている。ローマのセンシ会長をはじめ、ゼーマン監督(レッチェ)、シモーニ氏(元シエナ監督)らがGeaの事業に嫌疑を示したのがきっかけとなったのである。

 アンティトラスト機構のテザウト会長と、ローマ検察庁は、これらの「疑いの目」を受け、本当にGeaが他の代理人に比べて、業務上、明らかに有利な立場に置かれているのかどうか白日の下にさらすべく、本格的な調査に乗り出した。

 シードルフの「告発」から、浮き彫りになった代理人による不正な画策の疑い。どんな世界にも善人と悪人が存在する。「利用されない」ためには、選手たちも可能な範囲で自己管理するように努めなければならない。

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