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不振の巨人には常識の打破が必要!?
“守護神”澤村が化学反応を起こす。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byTamon Matsuzono

posted2011/07/10 08:00

不振の巨人には常識の打破が必要!?“守護神”澤村が化学反応を起こす。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

7月3日の中日戦では自己ワーストの5失点KOをくらい6敗目を喫した澤村拓一。崩れてきたフォームを直すための試行錯誤が続く……

ルーキー牧田をクローザーに抜てきした渡辺監督。

 だから、その渡辺監督がルーキーの牧田和久投手をクローザーに抜てきしたのは、コペルニクス的転回だったかもしれない。

 もちろん開幕後のお家の事情もあった。

 昨年、クローザーを務めたブライアン・シコースキー投手が右ひじの故障で戦線離脱。急きょ、クローザーに抜てきした岡本篤志投手も安定感に欠けた。先発陣の頭数は、ある程度揃っている。しかも牧田は先発で好投しながら、なかなか結果が出ない。

 条件が十二分に揃っての決断だったが、この起用には、異論を唱える人も少なくない。

クローザーはルーキーにうってつけ!? 日本と異なるメジャーの常識。

 ただ、実はこのルーキーのクローザー起用はメジャーでは常套手段なのである。

「投手にとって、もっとも経験を必要としないポジションはクローザーだ」

 こう言い放ったのは『マネー・ボール』の主人公として有名なオークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMだった。

 先発は6回を3失点以内で投げ切るクオリティー・スタートを目指す。そのためにはペース配分も考えなければならない(特に新人の場合は厳しい球数制限もある)。打者との様々な駆け引きも必要となるし、技術的には、ストライクの取れる球種が少なくとも3つは必要となってくる。

 そこで成功するためには、経験というファクターが大きく影響する。

 ところがクローザーにはペース配分は必要ない。ストライクをとれる球種も2つあればいいし、ある意味、球に力さえあれば打者との駆け引きも必要ない。

 クローザーは経験ではなく、ボールの力さえあれば何とかなる。そういう意味では、ルーキーにはうってつけのポジションだ、というわけだ。

 ビーンGMは、そうして'05年にテキサス大時代から大学球界屈指のクローザーだったヒューストン・ストリート投手(現コロラド・ロッキーズ)を、抑えに抜てきして成功を収めた。

地区優勝を争うブレーブスで26セーブをマークするルーキー守護神。

 そして、この流れは今でもメジャーで確実に引き継がれている。

 昨年はテキサス・レンジャースのネフタリ・フェリース投手がルーキーで最多の40セーブをマーク。この働きが原動力となって、チームは創設以来初のワールド・シリーズ進出を果たした。

 そして今季もルーキーをクローザーに抜てきしたのが、アトランタ・ブレーブスだった。 ブレーブスは守護神のビリー・ワグナー投手が、昨年限りで引退。そこで今季はルーキーのクレイグ・キンブレル投手を開幕から抑えに抜てき。そのキンブレルが45試合を消化した7月5日(日本時間6日)時点で、すでに26セーブをマーク。地区優勝争いのキーマンとなっている。

【次ページ】 巨人はルーキー澤村のクローザー起用で問題解決!?

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