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ポルトガル代表が身につけていた
大一番での「強者の振る舞い」。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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posted2009/12/02 10:30

ポルトガル代表が身につけていた大一番での「強者の振る舞い」。<Number Web> photograph by Getty Images

プレーオフを連勝したポルトガルがW杯本大会出場を獲得。ボスニア・ヘルツェゴビナの初出場の夢は断たれた

 欧州予選プレーオフ第2戦。波乱の目ありと予想し、現地まで出かけていったボスニア・ヘルツェゴビナ対ポルトガル戦だったが、結局、ポルトガルが順当に勝利を収め、W杯出場を決めた。

 ポルトガルは、ホームの初戦を1-0でものにしたものの、その終わり方は決して良くなかった。あっぷあっぷの1-0。スロベニアを相手にホームの初戦を2-1のスコアで折り返したロシア以上に危うく見えた。

 予選リーグの戦いでも、ポルトガルは大苦戦を強いられた。プレーオフ進出を決めたのはその最終戦。ぎりぎり2着に滑り込んだ格好だ。落ち目を印象づける戦いだった。

 準優勝したユーロ2004、ベスト4入りした'06年ドイツW杯。ポルトガルは、この2つの大会で華々しい成績を収めた。欧州の中堅国から世界の強国へ大変身を遂げた。選手も欧州のビッグクラブへ続々と移籍した。そこで少しばかりお腹いっぱいの気分を味わってしまったような気がする。

ユーロ2008から勢いに陰りが見えていたポルトガル代表。

 ユーロ2004は、自国開催だったことが大きなモチベーションになっていた。選手自身の出世欲も高かった。代表で好成績を収めることと、ビッグクラブへの移籍は、セットになっていた。好成績には、分かりやすい理由が垣間見られた。

 だがユーロ2008では、上昇ムードや勢いに少し陰りが見える。成績はベスト8。決して悪くはない結果だが、2年前、4年前とは明らかに違った。プレーにはプラスアルファの要素が欠けていた。少なくとも、欧州で最も勢いのある代表チームではなくなっていた。そこでベスト4入りしたロシア、優勝したスペインとは対照的だった。

 今回の苦戦もその延長線上にある。右肩下がりは続いていた。プレーオフの初戦でボスニアに1-0で勝利を収めても、なお波乱が予想された。

“巧い”サッカーから“強い”サッカーへの変貌。

 プレーオフ第2戦、ボスニアのホームスタジアムは、戦後復帰をW杯出場で祝おうという熱気とともに盛り上がっていた。ポルトガルにとってはまさにアウェー。波乱の目はいっそう膨らんだかに見えた。しかし、ポルトガルは冷静だった。かつてのドイツ、あるいはACミランを髣髴させる冷徹ささえ感じさせた。ボスニアの主力選手3人が、累積警告などで出場できなかったラッキーが手伝ったことは確かだが、ポルトガルは一度として混乱に陥らなかった。質の高い攻撃サッカーで、変に前がかりになることなく、アウェーゴールを狙いに行った。番狂わせが起きる予感は、90分を通して一切抱かなかった。大一番で格の違いを見せつけたのだった。

 過去3度のビッグイベントで培った自信のようなものを感じた。巧いだけではなく、強さも感じさせた。来るW杯本大会でも、格下に取りこぼすことはなさそうな気がする。韓国に敗れグループリーグ落ちした'02年W杯のようなことはないだろう。“あるところ”までは確実に歩を進めそうである。

<次ページに続く>

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