佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

ダウンフォース 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2007/06/20 00:00

ダウンフォース<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 レース中、プレスルームで見上げるTVモニターに「佐藤琢磨、黄旗追い越しで審議中」のメッセージが出たのがスタートから10周過ぎ、スタート・シグナルの赤色灯がブラックアウトしてから14分ほど経った頃だった。

 さらにその14分後「佐藤琢磨、次戦で10番グリッド降格」の裁定が下された。琢磨がスーティルを抜いて13番手に上がった直後にスピンアウトした直後のことである。

 オープニングラップの1コーナーで多重アクシデントが発生。すぐさま追い越し禁止を告げる黄旗が提示されたが、そこで佐藤琢磨はジェンソン・バトンを追い抜いたと判定されたのだ。事実、1コーナーから2コーナーにかけて琢磨はバトンより先行している。

 レース後の琢磨に聞くと、彼の解釈はこうだった。

 「チームからの無線で黄旗が出ていることは知ってました。コントロール・ラインはボクの方が先に通過して、ジェンソンはボクのスリップストリームから出てオーバーテイクして、サイド・バイ・サイドになった。1コーナーでジェンソンが早目にブレーキングしたので、ボクを元のポジションに戻したのだと思った。だから1コーナーでレースしてるつもりはなかった」

 バトンとしては、琢磨のポジションを戻すも何もない、1コーナーで黄旗が出ていたから規則通りに減速した、ということなのだろう。佐藤琢磨とスーパーアグリの抗議も虚しく、裁定は覆らなかった。

 カナダでセンセーショナルな6位を得た1週間後のレースだっただけに、アメリカでも大きな期待が懸けられた琢磨だったが、現実はそう甘くはなかった。

 インディアナポリスのコースで求められるのは、ダウンフォースとトップスピードの高度なバランスである。マシンが強いダウンフォースを発揮できないと、タイヤが滑ってグリップしなくなるからまずタイヤがうまく働くようにダウンフォースを与えて、そこからセッティングで少しずつダウンフォースを削りながらトップスピードを高めて行く。モントリオールやインディアナポリスはトップスピードが高いとラップタイムも向上する直線の長い高速サーキットなのだ。

 しかしスーパーアグリのマシンは“素”のダウンフォース・レベルが高くない。もうこれ以上減らすわけにはいかないギリギリのレベルまでダウンフォースを削っても、トップスピードは22台中の21位(琢磨)と、22位(チームメイトのA・デイビッドソン)。しかも琢磨は予選の第一ステージで、アタックラップ中タイヤをロックさせるミスを出し、18位。この辺りからレースの流れが悪くなり、スタートもうまく決められなかった。

 スーティルを抜いたあとのスピンについて琢磨は「ボク以外のドライバーもそうだったと思いますが、あのコーナーは追い風を受けるとフラフラになる」と語ったが、ダウンフォースのあるマシンであれば、なんとか踏ん張れたのかもしれない。今年のアメリカは、うまく流れに乗れなかった一戦となった。

 2週間後のマニ-クールにはスーパーアグリのマシンも新しい空力パッケージをまとうことになる。マニ-クール1週間後のシルバーストンは、琢磨のホームコースのひとつ。そこで善戦するためにも、10番ダウンしたグリッドからどんな戦いを展開できるか。試練の戦いに注目したい。

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