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岡田武史がついに完成させた
“王様無しの全員で闘うチーム” 。 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2009/06/08 12:30

岡田武史がついに完成させた“王様無しの全員で闘うチーム” 。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 6月6日、日本はタシケントでウズベキスタンを1-0で退け、最終予選2試合を残した段階で4大会連続となるワールドカップ本大会出場を決めた。

 この日、時差の関係もあって、世界最速で南ア行きチケットを手に入れた日本だったが、ロスタイムを含めた94分間の闘いは非常に厳しい展開だった。

完全アウェーの状況下、ペースはウズベキスタンに傾いていた。

 立ち上がり、ウズベキスタンは前線へロングボールを放り込み、日本の選手たちに最終ライン周辺へ注意を向けさせようとする。そうかと思うと、日本が攻めようと持ちこんだボールを自陣最終ライン前でカットすると、パスを素早くつないで日本のペナルティエリアあたりに現れる。攻守の切り替えが速いウズベキスタンに対し、日本はプレッシングをかけられず自分たちのペースに持ち込めなかった。

 昨年アジア最優秀選手に輝いたMFジェパロフを右サイドに置き、左サイドではMFハサノフと左サイドバックのスユノフが攻め上がる。特にスユノフは中距離から積極的に日本ゴールを狙う。そうやって、長友佑都と駒野友一の両サイドバックの動きを消しにかかり、一方で、トップ下に入ったMF中村憲剛へも厳しく寄せる。ウズベキスタンは日本のプレーを相当研究してきているようだった。

 加えて、ボールが走らないピッチコンディションと、不可解な判定が続くレフェリングによって、日本はなかなか前へ出られない。攻め上がっても中盤でボールを奪われ、急いで守備に戻る展開が続く。パフタコール・スタジアムを埋めた3万4000人の声援も、アウェーならではの雰囲気を作り出して日本の選手を圧迫していた。

追加点が奪えぬ日本は、逆に身体を張った守備でしのぐ場面が増える。

 そんな状況の中で、前半9分、この試合最初の得点機らしい得点機にFW岡崎慎司が鋭い反応を見せ、相手が完全に波に乗る前に、日本はリードを奪った。

写真“岡田ジャパンの執念”を最も感じさせた岡崎慎司の低空ヘディング・シュート。身体を全部投げ出しての勇気ある1点だ 【写真クリックで拡大】

 中盤でボールを持った中村憲剛が、相手ディフェンダーの裏へ顔を出した岡崎へパスを通すと、岡崎はペナルティボックスで相手選手2人を置き去りにして一撃を放つ。GKネステロフがブロックするものの、リバウンドに反応して頭で押し込んだ。

 先制点が相手の反撃を呼んだのは言うまでもない。それでも、後半早々までに3度ほど得点チャンスを作り、中にはMF遠藤保仁のFKがポストを叩いたものもあった。そのチャンスに追加点を奪っていれば、また違った展開になったのかもしれないが、後半、それも最後の20分ほどは日本の選手が身体を張って守備に回る展開になり、GK楢崎正剛はもちろん、DF中澤佑二やMF長谷部誠のハードワークに助けられる場面が目立った。

 終了間際には不可解な判定が続き、長谷部が退場、岡田武史監督まで退席させられるという日本には不利な流れの試合だったが、その中で選手たちは最後まで粘り強く闘い抜いた。そこに、チームとして身につけた精神的な強さを感じる。泥臭く、執念さえ感じさせる岡崎のゴールは、粘りや忍耐力を身につけつつあるこのチームを象徴しているようにも思えた。

どんな状況からでも戦える、心が強いチームがようやく完成した。

 楢崎は「我慢するところは我慢できた」と言い、長谷部は「このチームは気持ちが強い。シュートに身体を投げ出すし、王様がいるわけでもない。全員でサッカーをする」と語った。また、中澤は「このチームには流れが悪くなった時に戻る土台がある」と指摘した。

 1年に何回か、それも短期間しか集まれない日本代表を、岡田監督はクラブのような“チーム”にしようと努めてきた。信頼と結束に裏打ちされた自分たちのプレースタイルを土台にしてこそ、強さを発揮できると考えたからだ。その努力の結果が、昨年1月のチリ戦から数えて27戦目のこの試合に、勝利という形になって表れたと言っていいだろう。12年前に日本を初のワールドカップ出場に導いた岡田監督は、この日、「冷静に戦ってくれて、1対1で簡単に負けなくなったのが非常に大きい」と話した。

 ただし、欧州地区のワールドカップ予選であれば、この日のような厳しい試合は当たり前のこと。世界の舞台の厳しさはアジア予選の比ではない。指揮官は本大会でのベスト4入りを目標に掲げているが、これから1年の準備期間は、できるだけ多くの強豪と試合をして、これまでに手にした土台を維持しながら、プレーの精度と質を高めていかなくてはならない。

 岡田監督はこう語っている。

「12年前は出場することだけが目標で、それに全てをかけてやっていた。今回はここがスタート。チームは一歩ずつよくなってきている。なにより大きいのは“1+1=3”ということを信じて戦えるようになったこと。世界は見えない距離にあるわけじゃない」

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