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「モウリーニョ2世」が挑む
チェルシーという難関。
~ビラスボアス、長期政権への課題~ 

text by

山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

PROFILE

photograph byMutsu Kawamori

posted2011/07/12 06:00

ポルトで昨季リーグとカップを制し、EL優勝で締めくくった

ポルトで昨季リーグとカップを制し、EL優勝で締めくくった

 昨季を無冠で終えたチェルシーには、この夏、大型補強が見込まれている。6月22日、第一弾として、アンドレ・ビラスボアスが“獲得”された。新進気鋭の若手監督を引き抜くため、ポルトに払った違約金は約18億円。指揮官としては世界最高の移籍金だ。

 イングランドの各紙は、『ようこそチェルシーへ』の見出しでビラスボアスを迎えた。もっとも、これは多分に皮肉である。母国ポルトガルでは、同邦の名将、ジョゼ・モウリーニョの2世と呼ばれる逸材も、過去7年間で「元祖」を含む監督6名が離職した新任地で、短命に終わるという見方が強いのだ。

 33歳という年齢は、「可能性」よりも「未熟」を示すバロメーターとして扱われている。プレミアリーグ監督の「現役最年少」という事実もさることながら、決定直前まで、64歳の大御所、フース・ヒディンク(トルコ代表)が新監督の最右翼と目されていたことから、余計にビラスボアスの若さが際立つ結果となった。

モウリーニョ時代の成功に分析担当として貢献した戦術面での腕前。

 といって、主力のベテラン勢に見下されかねないという意見は短絡的だろう。たしかに、クラブの監督経験はポルトガルでの2年間のみだが、ビラスボアスにはチェルシーでの実績がある。対戦相手のスカウトとして、モウリーニョ時代('04-'07年)の成功に貢献しているのだ。控え室での発言権も強いテリー、ランパード、ドログバら、レギュラー陣を感服させたDVD映像付きの緻密な分析資料は、ビラスボアスの手によるものだった。元敏腕スカウトは、旧知の主力組からも就任を勧められたと言われる。戦術面での腕前は既にチーム内で認知されているのだ。

 基本システムとして好む4-3-3が、チェルシーの定番であることも新監督には好都合だ。そのスタイルは、堅守を前提とする従来のチェルシーよりも攻撃的だが、「個人ではなく集団としての戦い」という指揮官のモットーは、モウリーニョ時代からチームの主力に浸透している。

<次ページへ続く>

【次ページ】 選手のエゴも桁違いなビッグクラブを率いる難しさ。

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