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小川×吉田戦、因縁もいいけれど……。 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph bySusumu Nagao

posted2005/12/01 00:00

小川×吉田戦、因縁もいいけれど……。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 さまざまなメディアの様子を見ていると、大晦日に『PRIDE

男祭2005 頂−ITADAKI−』で行なわれる『小川直也×吉田秀彦』の“宣伝”や“煽り”がハンパではないことに気づく。明治大学時代、先輩後輩の関係にあったふたりの柔道王。中継をする放送局は連日連夜、両者の顔をアップにしたスポットを社運を賭けるがごとく流し、雑誌や新聞にはふたりにまつわる因縁をこれでもかと書き連ねられている。

 例えばこんな感じだ。

 といった具合に枚挙に暇がないのである。小川の視点に立ってみれば、吉田はつねに目の上のタンコブであり、“因縁”という日本人が好むファクターをバックボーンに実力とタレントを兼ねそろえた“ふたりの柔道王”が戦うのだから、盛り上らないわけがない。両者、絶対に負けられない対決。また、“世界一オリンピック好き”といった我々の国民性を考えても、縁のある彼らの試合は、格闘技を一番よく見る若い層だけではなく高齢層にもアピールできる。なるほど、ドラマ性もあって見れば見るほどよく出来たカードなのである。各メディアが煽りたくなる気持もわからなくない。

 余談だが、関係者によれば、DSEの榊原信行社長は、吉田がデビューしたときからこのカードの実現を画策していたそうだ。そのためには信頼関係が必要と考え(誤解を恐れず言えば外国人選手はオカネで動くが、日本人選手はそうはいかない)、DSEは吉田の主催する『VIVA JUDO!』をサポートしたり、小川に対しては『ハッスル』の運営を通して信頼関係を構築。そして時は訪れたというわけで、発表直前にスポーツ紙にスッパ抜かれゴタゴタしたというが、両者にはおおむね良好に承諾をされたということだ。

 そう、おおむね良好なのである。“因縁”というスパイスが鼻をつくほど効いている対戦ではあるけど、そこに目を奪われてしまうのはどうかな、と。

 頭によぎるのは4年前の光景。取材で小川を尋ねたときのことだ。その日は、某タレントと小川の柔道マッチの収録・取材があったのだが、場所は“原点”とし小川が練習に通っていた明大の柔道場だった。当時、吉田は明大柔道部の監督をしており、現場の責任者という立場。小川は吉田に対し「悪いなぁ」といった感じで、普通に会話を交わしていた。

 盛り上りに水を差すわけではないが、ふたりは分別のあるオトナである。そして、オーディエンスの反応に敏感なプロでもある。本気の因縁がそこにあるかは甚だ疑問だ。

 小川はプロレスの世界観を大切にし、本音を明かそうとはしない。吉田も然り。熱いところもあるが、現状を把握できる頭のキレるオトコである。飄然としつつも本音はやっぱり語らない。ふたりともいい意味で“タヌキ”なのだ。

 つまり、本音を隠して、本気の試合をやる。

 因縁や煽りも結構だけど、ここは純粋に本質的な彼らのファイターとしての能力を見てみたいという思いが筆者にはある。柔道家同士の対戦は、過去の傾向から得てして凡戦になるものだが、そこはふたりの“プロ魂”が体を動かすことだろう。柔道家にしては打撃に多く着目している両者だけに、壮絶な殴り合いになることもあるだろう。

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