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土壇場で踏ん張った名門ニュルンベルク 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2006/05/10 00:00

土壇場で踏ん張った名門ニュルンベルク<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ニュルンベルクといえば超名門(だった)。多くの代表選手を抱え(ていた)、最新のスタジアム(当時)を保有し、ある意味でドイツサッカーの中心地(だった)。正式名称は『1FCニュルンベルク』。強豪中の強豪ということで単に「ザ・クラブ」とも言われるのは、それほど圧倒的な強さを誇るから(だった)。

 現在形で書けば嘘になる。ここはやはりカッコ付きの過去形のほうがいいようだ。それが南部の巨人ニュルンベルクである。実はこのチーム、バイエルン・ミュンヘンが出現するまでは、戦前戦後を通じて多くのタイトルを獲得、真の意味で偉大と称されたチームなのだ。知ってました?

 ところがブンデスリーガが創設されてからは、伝統にあぐらをかき、チーム強化で大きく遅れを取ったものだから、すっかり没落してしまった。ここ12年間は1部で4年、2部で6年、そしてなんと3部で1年を過ごしている。昔の栄光が嘘のような低迷ぶりである。

 今季も序盤戦は冴えなかった。得点源のミンタルを怪我で失い、チーム戦術に一貫性がなく、次々と重要な試合を落としていった。そしてクラブは昨年11月、ボルフ監督を解任、ハンス・マイヤーを就任させた。ただ63歳と峠を越えているマイヤー監督では、“急場しのぎ”の感が否めなかった。タイトル獲得に無縁で古い指導法から抜け出せないマイヤーが、ニュルンベルクを救うことなど無理な注文だと予想された。

 ところがマイヤーは若手を褒め、潜在力を引き出すことでチーム力を安定させ、就任当初は最下位だったチームを9位にまで引き上げる。そして去年まで指揮をとっていた古巣のボルシアMG相手に5−2で勝利したことで1部残留を決めたのだった。

 これに喜んだロート会長はクラブ創立106年目に当たる4月下旬、新たな契約を結んだことを発表した。契約期間が面白い。「どちらか一方から、きちんとした理由が示されない限り有効」というもので、事実上の無期限契約となっている。これは長いリーグの歴史でも初めてのこと。それだけクラブの信任が厚いということなのだ。

 昨年8月、ロート会長は70歳の誕生日を迎えた。試合前、クラブはスタンドからピッチまで赤い絨毯を敷いてこれを祝福。赤は会長の名前(ロート)にひっかけたものだ。そして今回の契約を発表した記者会見場では、会長が監督に3メートル大のペルシャ絨毯をプレゼント。ドイツ語の「絨毯」には、「足を地に付けろ!」の意味がある。文字通り、「マイヤー監督にはこの先、ずっとやってもらいたい」という気持ちが含まれているのだ。

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