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キッシンジャーの「異常な愛情」は、
FIFAの底知れぬ闇を照らすか? 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2011/07/08 10:30

キッシンジャーの「異常な愛情」は、FIFAの底知れぬ闇を照らすか?<Number Web> photograph by KYODO

政界入りする前は、ハーバード大学で国際政治学の教鞭をとっていた“ドクター・キッシンジャー”。当時、そこで学んだ者の中には中曽根康弘元首相もいた。日本と中国、そしてアジア諸国にとっても非常に重要な役割を果たし、今でもその影響力は世界的にみても最大級である

 女子のW杯ドイツ大会やメキシコで開催されているU-17のW杯、そして開幕したばかりの南米選手権等々と国際大会は目白押しだが、5月末から新シーズンが始まる8月頃まではメディアの欧州組にとってもつかの間の「オフ」となる。

 しかしこのオフの期間に、奇妙な場外戦が注目を集めることになった。FIFAの会長選挙を巡る騒動である。

 前哨戦では4選を狙うゼップ・ブラッター会長に対して、FIFAの理事でアジアサッカー連盟の会長を務めるモハメド・ビン・ハマムが出馬を表明。一騎打ちが展開されるかと思いきや、途中からは泥仕合の様相となる。贈収賄疑惑が取りざたされたばかりか、2022年のW杯カタール大会の招致における買収疑惑なども浮上し、FIFAの上層部全体を巻き込む一大スキャンダルに発展してしまったからだ。

 最終的にこの一件は、FIFAから職務停止処分を受けたハマム氏が立候補を辞退。ブラッター会長の4選が確定すると同時に、贈収賄疑惑に関与した他の人物も引責して一応の決着をみる形になったが、騒動の余波の中では思いもかけぬ名前が飛び出してきた。

 アメリカ人の外交評論家、ヘンリー・キッシンジャーである。

ブラッター会長肝いりの特別委員会。目玉は超大物フィクサー!?

 6月1日に再選されたブラッター会長は、FIFAの改革と腐敗の一掃をはかるべく、ヨハン・クライフやオペラ歌手のプラシド・ドミンゴなどから成る特別委員会の設立をぶちあげた。その目玉とされたのが、1960年代から70年代にかけて国際政治の舞台で活躍した超大物、キッシンジャーの登用だった。

 名前を聞いてもピンと来ない人のために解説しておくと、キッシンジャーはニクソン政権やフォード政権で大統領補佐官や国務長官をつとめた人物で、米中和解やベトナム戦争終結などを実現させた凄腕のフィクサーである。ちなみに彼はベトナム戦争を終結させた功績を認められ、1973年にはノーベル平和賞も授与された。

 またキッシンジャーは、国際政治や外交の舞台を越え、社交界やショービズの世界においてカルト的な人気を博したことでも知られる。一例に挙げられるのは、スタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情』だ。キッシンジャーが主人公のモデルになったという説は、映画ファンの間で、長い間まことしやかに囁かれていた。

【次ページ】 豪腕ぶりを発揮し'94年アメリカW杯の誘致を成功させた。

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