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ブンデスを盛り上げる3つの理由。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2009/04/29 07:00

ブンデスを盛り上げる3つの理由。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

 リーグ戦で9位と不振が続くレバークーゼンが21日のDFBカップを勝ち抜き、ベルリンでの決勝戦へと駒を進めた。運動量だけに頼る退屈な戦法で向かってくる2部リーグのマインツを延長戦の末に4-1と下したのだ。体力最優先の、アイデアも技術もないチームに負けなくてよかった、というのが正直な感想だ。

 試合前からクラブ会長は「絶対に勝たねばならない。勝利は義務だ」とチームにカツを入れていた。そりゃそうだ。ここで負けたら来季のUEFAカップ出場の可能性を失い、財政面で響いてくる。ラバディア監督にとっても、チームの命運と自身のクビがかかった大一番だった。チームが1月からの11試合で勝てたのは2回だけ。奪った勝点が10では、「来季もお願いします」とならないことくらい分かっている。昨季は勝点が目標よりたった1つ足りなかったという理由だけで、当時の監督が解任された。

 このDFBカップ、大波乱を生むことで有名だ。弱小が強敵を倒すということだが、それも2部(時には3部)のチームがブンデスリーガの強豪に一泡吹かせるのである。失うものがない下位のチームはまさに『窮鼠猫を噛む』で、猛然とアタックを仕掛けてくる。受けて立つ側の強豪はふだんの戦術が通用せず、個々の技術も徹底的に潰されてしまう。その結果がジャイアントキリングにつながるのだ。

 この辺りは、何はなくてもカンプガイスト(闘争心)で勝負を挑むドイツ伝統の技とも言えるが、こんなことばかりやってるからスペイン勢に大きく劣ってしまったのだぞ(怒)。もしもマインツが勝ってたら、それこそドイツ蔑視派に格好の餌をあげる形になっていたはずだ。長期のリーグ戦なら戦略の立て直しが出来る。しかしカップ戦はそうはいかない。どうしたってその国の国民性がモロに出る。ということで、ファン目線では2部のチームの躍進は嬉しいことだけど、強豪ドイツ復活を望む勢力としては喜べないのである。

ジャイアントキリングもどきの次はダービーマッチもあるのだ!

 それでは、DFBカップもう1つの準決勝に期待しようと思ったのだが、組み合わせは北部ダービーのハンブルガーSV対ブレーメンじゃないか……。あ~あ、面白くなさそう。北部の気質ゆえ、1にも2にも「気合いだ~~!」で、ファイトとパワー(だけが)溢れる肉弾戦になるはず――、とネガティブに予想していたところ、これが最初から最後まで手に汗を握る展開の好試合に。う~ん、ドイツサッカーはこれだから面白い(自己主張がないのか、君は?)。

 両チームとも先発メンバー4人を代えての布陣。GKロストとヴィーゼはいずれも代表クラス。ハンブルガーSVはクロアチア出身のFW2人、ブレーメンはMFとFW3人のラテン系が軸になり、チームカラーの差も明確。ジエゴがゴールのお膳立てをすれば、得点王オリッチが同点に持ち込み、さらに次から次へとゴール前でチャンスが生まれる。

『緊張感と熱心さが同居した試合内容』(キッカー誌)と賞賛されたのはしかし90分までだった。ロスタイムにレッドカードを貰って1人減った地元ハンブルガーSVが守りに徹し、時間潰しの戦法を取ったからである。こうして試合はPK戦に持ち込まれた。ここからが本当のハイライトだった。ヴィーゼが3本止めてブレーメンに勝利をもたらしたのである。

 この結果、ハンブルガーSVは22年ぶりのタイトル獲得チャンスに手が届かなかった。しかしガッカリするのはまだ早い。リーグ戦は3位で優勝の可能性が残っている。そしてUEFAカップ準決勝も控えている。その相手は……、え、ブレーメン? 大会は2回戦制、つまり8日間で2回当たるのか。やれやれ。え、その3日後に今度はリーグ戦でまたブレーメンと対戦するだって? ということは、19日間で4回も北部ダービーをやるのか。フ~~、御苦労さん。

どう転んでも必ず稼ぐ根性が凄い? ハンブルガーSV

 ところで試合が立て込む中、ハンブルガーSVはしっかりと稼いでいるようだ。UEFAカップはベスト4進出により、約3億2000万円を欧州連盟から受け取った。負けたDFBカップでも約2億円を手にした。UEFAカップで優勝したら約5億6000万円が新たに金庫に入ってくる。リーグ戦はホーム3試合を残している。当然すべての試合で莫大な入場料収入が見込まれる。マスコミの試算によれば、「ハンブルガーSVはシーズン最後の45日間で、毎日約5000万円を稼ぐ」そうだ。毎日、である。計約23億円だ。ただし「2つのカップ戦で優勝した場合」なので、現実の額はこれより若干低くなる。こうして考えると、次のUEFAカップ2連戦が俄然、面白くなってきた。北部ダービーがエル・クラシコに見えてくるぞ(信念がないのか、君は?)。

 なお、チャンピオンズリーグは出場資格を得ただけで約20億円が入る。ということで、UEFAカップ優勝のタイトルも重要だが、リーグ戦で上位2位までに滑り込むのもハンブルガーSVにとっては大変に大きな意味を持つのである。シーズン最後まで勝敗と順位と他人の懐具合の話題で楽しめるなんて、どこまでも素敵なリーグなのである(褒めてるのか貶しているのか、どっちなんだ?)。

ティム・ヴィーゼ
ブレーメン
レバークーゼン
ハンブルガーSV

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