MLB Column from WestBACK NUMBER

今季注目すべき男、大家友和。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byYasushi Kikuchi

posted2005/03/08 00:00

今季注目すべき男、大家友和。<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 今回このコラムを移動中の飛行機の中で仕上げている。フロリダでのキャンプ取材を終えLAに戻る途上だ。今年は特定チームについておらず、フロリダとアリゾナをそれぞれ1週間ずつ回ろうとしている。とりあえずそのフロリダ編を終了したところだ。

 1週間という限られた時間のため、フロリダにいる日本人全9選手を見て回ることは当然不可能だったが、今回どうしても会っておきたかったのが新生ナショナルズの大家友和投手だった。ご存知のように、昨季の大家投手は、打球を右腕に受け複雑骨折するという不慮の事故に見舞われ、シーズン大半を棒に振った。今季はチームもワシントンDCに本拠地を移転し、大家投手にとってまさに心機一転のシーズンになると考えたからだ。

 「もう何ともないと言われました。あとはちょっと怖さが残るくらいですかね。ここから骨が飛び出てくるような……」

 大家投手が笑顔ながらに指し示した右腕には20?ほどの手術痕が刻まれていた。最初の手術では打球を受けた皮膚が内出血しているため縫合することが出来ず、最終的に計3回の手術を受けることになった。その間激痛との戦いが続き、鎮痛剤もあまり効かず食欲すら失っていたという。しかし今では医師から完治のお墨付きをもらい、キャンプでは何の問題もなく投球ができるようになっている。

 実は大家投手は、1999年にレッドソックス入りしてから故障知らずの男だった。2003年シーズンまでの5年間、年間登板試合数はすべて30試合を超えている。確かに最初の3年間はリリーフ登板も含まれているが、それはメジャーの先発枠に定着するまでにリリーフ登板で起用されたため。それ以外はメジャーとマイナーを行き来する慌ただしい中でも、きちんとスケジュール通りに投球を続けてきたのだ。以前に右腕に10度近いメスを入れたブロケイル投手を紹介したように、手術が日常茶飯事のメジャー球界にあって、5年間もまったく肩、ヒジに問題なく過ごしてきたのは、まさに驚異的と言えるだろう。

 もちろん今回大家投手の姿を見て、すっかり安心させられた。練習中に顔なじみの選手が「オオカサン イズ グッド!」と声をかけてくれた。チームメイトの目にも大家投手が順調な調整を続けているように映っているのだ。昨年のような不慮の事故がない限り、今季の彼は間違いなく先発ローテーションを守って投げ続けてくれることだろう。

 ところで、今回大家投手と再会を果たし、彼の中に何らかの“変化”を感じ取ることができた。とにかく明るいのだ。練習中始終笑顔を振りまいていたのが印象的だった。

 皆さんの中で、メディアの報道を通じて受ける大家投手の印象はどちらかという堅物というイメージを抱いていた方も少なくないはずだ。メディアの前では笑顔を見せず強面を貫き通してきたのだから仕方がないかもしれない。しかし本来の彼自身はといえば、とにかく純粋な男というほかない。

 大家投手は確固たる“自己”を持っている(もちろんメジャーで活躍する選手なら誰でも持っていると思うが、やはりそれぞれ質は違ってくるだろう)。その部分では決して妥協を許そうとしない。だからこそ時としてメディアにも厳しい目を向けてしまう。もちろんメディアから疎んじられるのを承知しながらも、自分を曲げようとしなかった。その不器用とも思える生き方は、野茂投手に類似したものを感じていた。この2人には、回りを気にせず真っ直ぐに生きていく強さが滲み出ている。

 野茂投手が社会人野球の現状を憂い、若手選手にプレーの場を確保するためクラブチームを結成した。そして大家投手は、京滋地区にJリーグ型の一環指導を目指した地域野球クラブを確立するため、昨年のシニアリーグに続き社会人のクラブチームを立ち上げた。野球だけでなく、オフの活動でも2人は自分の思った道を突き進んでいる。

 大家投手の笑顔が果たして今後すべてのメディアに向けられるかといえば、そうは思わない。しかし彼の中で“自己”が今も成長し続けているのは間違いない。いろいろな意味で、今季の大家投手に注目してほしい。

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