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甲子園コンプレックスはもう克服!?
日本文理が見せた地方勢の意地。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/08/20 12:50

甲子園コンプレックスはもう克服!? 日本文理が見せた地方勢の意地。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

「全国制覇」――。

 少し前まで、そんな目標を掲げられる高校は限られていた。力量だけでなく、遠慮や分別もあったのだろう。だが、ここ最近は、どの地域の高校を訪れても、そこそこの力さえあれば、臆面もなく「全国制覇」を口にするようになった。

 精神のボーダレス化。そうとでも呼ぶべき現象がここ数年で一気に進んだのだ。

 きっかけとなったのは、2004年夏の南北海道代表の駒大苫小牧の優勝だ。彼らは'05年には連覇、'06年にも準優勝を果たしている。北海道のチームが一度優勝しただけでも快挙なのに、駒大苫小牧は夏の甲子園で14連勝もした。

 あれ以来、高校球界における「全国制覇」という名のバーの高さがぐっと下がった。もちろん、価値が下落したという意味ではない。少々のハンディキャップを言い訳にできなくなったと同時に、俺たちだって跳べるのではないか、そんな空気が漂うようになった。

PLのブランドをはね返す力を持っていた県岐阜商。

 そんなことを改めて実感した大会10日目の第1試合と第2試合だった。

 第1試合は、県岐阜商とPL学園の対戦。県岐阜商は、名門中の名門、PL学園を相手に憶するどころか堂々と渡り合い、6-3と力で圧倒した。

 県岐阜商のある選手が話す。

「僕たちは整列のときから、気持ちで負けないよう、強く見せるようにしているんです。『やってくるな』って思わせるような目つきをする。それで相手が目をそらしたら、弱気だな、って。でもPLの選手には、さすがににらみ返された。でもこっちも逃げなかった」

 ひと昔前までは、PL学園は「ユニフォームで3点、整列して2点、試合が始まる前に5点差がついている」とさえ言われたほどの存在感のあるチームだった。だが、そんなチームも、今の高校生たちにとっては、心の枷にならなくなっている。

 第2試合は、日本文理と日本航空石川。

 12-5で大勝した日本文理は、夏の甲子園では、新潟勢として25年振りとなる8強入りを果たした。

 高校野球ファンの間では新潟は全国でもっとも勝率の低い地域として知られている。春夏を通じて優勝がないばかりか、ひと大会で3勝以上挙げたことさえない。つまり、日本一からもっとも遠いところにいたのだ。

全国最低勝率の新潟勢でさえ「全国制覇」と言う時代。

 だが、そんな新潟勢でさえ、目標は「全国制覇」だと言ってはばからない。主力選手の1人が話す。

「新チームをつくるとき、キャプテンが『甲子園で勝てないと意味がない』ってみんなに言ったんです。だから県では負けていられないと、1年間、県内の公式戦は負けたことがない。練習試合で一度、負けたことがあるだけです。だから全国のベスト8といっても、まだまだ先がある」

 数年前、日本文理の大井道夫監督は、新潟勢が甲子園で勝てない理由を「甲子園に出ることが目標になってしまっているから」とこぼしていたことがある。しかし、そのあたりの意識が選手の方から劇的に変化してきている。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  「悲願の大優勝旗の白河越え」という言葉も忘れられた。

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