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躍動するキーパーたち。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byKazuya Gondo/AFLO

posted2004/10/28 00:00

躍動するキーパーたち。<Number Web> photograph by Kazuya Gondo/AFLO

 GKのファインプレーが話題を博している今季のセリエA。日ごろは脇役のキーパーだが、至近距離からのシュートを次々と阻止する大奮闘ぶりで、今シーズンは主役に一変、巷では「守りの美」が再認識されている。

 躍動するキーパーたち。勝敗を左右するディスケット(PK)では、例年に比べGKに軍配が上がる回数が多く、5節を終了した時点で、20チームのGKの平均シュート阻止率が2割7分と過去5年間で最高の守備率になっている。

 とりわけフィオレンティーナとレッチェの守護神、ルパテッリとシチニャーノのセービングは、かつてブラックスパイダーと呼ばれた「天才キーパー」ヤシンのごとき反射神経とジャンプ力に長け、長く伸びた両手足は瞬時にボールを吸い寄せる。1試合で17回ものセービングは、劣勢に立たされたチームの危機を救い、攻められれば攻められるほどに破り難い壁と化して守りに徹するプレーに、あの神様GKゾフも太鼓判を押したほどだ。

 今季、秀逸なプレーで見る者を圧倒する2人だが、昨シーズンはそれぞれ控え選手に留まり、公式戦の出場数は一桁だった。当時パルマのシチニャーノは、不動のフランス人GKフレイの存在により、持ち前の「ブロック」もなりを潜めた。ルパテッリにおいては、ケガでシーズンを棒に降っただけに、移籍先のフィオレンティーナにはセカンドキーパーとして迎えられるなど、チーム側の期待はまるで低かった。

 そんな痛恨の昨季から一転して、今シーズンの両キーパーはディーダ、ブッフォンなど強豪GKを脅かす存在に変貌。控えに甘んじていた昨シーズンへのリベンジのつもりか、毎試合、同僚キーパーに優るセービングでレベルの高さを見せ付けた。

 そもそも最強クラブは、優れたストライカー、レジスタ、ストッパー、そしてキーパーによって構成されるがゆえ、セリエAではGKがトップレベルであるのは絶対条件。欧州の中でもいち早く80年代半ばにGK養成プログラムを導入している。足が遅い、動きが鈍いなどの理由でキーパーへとポジション転向していったユースたちはもはや過去の話であり、幼少時からキーパーとして育成し、俊敏な動きを強化する方針を固めたのである。「派手さより確実さがGKのプレースタイル」とする元ユベントスGKコーチのボルドンの案で、完璧にボールをキャッチできるよう、至近距離からの練習を重用した。こうした指導の結果、ロッシ(元ミラン)、トルド(インテル)、ブッフォン(ユベントス)など優秀なキーパーが輩出されるに至った。

 「キーパーはイタリア人」。そういった風潮が、さらに多くの優れたキーパーを生み出し、2000年以降、イタリア人GKの中には舞台をセリエAから他国へと移すものも現れ、新天地でもその敢為なプレーでサポーターの信用を買っていった。

 こうして、セリエAの申し子たちは、唯一パロンドールに輝いたGK、ヤシンの「ボールを完全に止めることの重要さ」を教訓に、40年ぶりにGKとして個人タイトルを奪取しようと意欲を燃やしている。

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