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ロナウジーニョに噛み付いたイブラヒモビッチ 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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posted2005/11/29 00:00

ロナウジーニョに噛み付いたイブラヒモビッチ<Number Web> photograph by AFLO

 今年度のパロンドールに輝いたブラジル代表のMFロナウジーニョ(バルセロナ)。得点力もさることながら、疲れをまったく感じさせない気迫、そして華麗なプレーは「非凡」と形容するしか他に言葉が見あたらない。

 このたび、この「21世紀の天才」の神業が槍玉にあげられ、ちょっとした話題になっている。

 「コンピューターによるもの」

 スウェーデン代表でユベントスのFWイブラヒモビッチが、某企業のスポットCMで披露されたロナウジーニョのウルトラプレーをこう論じたことが、“天才バッシング”の始まりだ。

 ロナウジーニョが蹴ったボールがゴール上部のバーに当たり、一度もピッチにバウンドすることなく元に戻るという動作が4回連続繰り返される。しかも、ボールは4回ともまったく同じ場所に当たる。

 「絶対にありえない。コンピューターによる修正だ」と言ったイブラヒモビッチは、ロナウジーニョが成し遂げたパフォーマンスを「偽り」とまで断言した。かつて「ルーマニアのマラドーナ」と称えられたハジも、「経験からいうと、普通ではありえないこと。工作としか考えられない」と批評するなど、ロナウジーニョの黄金の足が生み出した「神業」の真偽が問われたのだ。

 そもそも、セリエAのジョカトーレはいつ何時も「至宝」に対して寛大であった。ごく限られた選手にしかできない超スーパープレーは常に絶賛されたものだった。不可能を可能にしたマラドーナの神業は「クレイジー」と笑殺されたこともあるが、今までは、決して肩を並べることのできない天才たちに敵対心など持ち合わせるものは誰一人としていなかった。

 このような経緯があったからか、今回のイブラヒモビッチによるロナウジーニョバッシングは、セリエAでは反感をかうどころか、画期的な出来事としてマスコミに大々的に報じられた。言いにくいことをはっきり言う選手の登場が国民の興味を誘ったのである。

 アヤックス時代にセンスの良さを買われて、期待のエースとして昨年ユベントス入りしたイブラヒモビッチは、リーグ優勝に貢献し、弱冠24歳にしてすでに欧州サッカーを代表する一流ストライカーに成長した。その自信が、「天才」と称えられる同世代のロナウジーニョへの大胆な発言という思い切った行動に出たのかもしれない。

 では、当の本人はどう答えたか。

 「特訓すればできること。チームの練習前にやっている僕のお気に入りのパフォーマンスさ」

 天才に牙をむいたイブラヒモビッチの度胸のよさにイタリア人は脱帽したが、ロナウジーニョの器の大きさにも驚かされる結果となった。

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