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メジャーリーグ 入札制度を考える 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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posted2006/12/26 00:00

メジャーリーグ 入札制度を考える<Number Web> photograph by AFLO

 レッドソックスの松坂大輔投手、デビルレイズの岩村明憲選手に続き、ヤンキースと入団交渉している井川慶投手もほぼ合意に達し、後は入団発表会見を待つばかりの状況になった。

 ポスティングシステム(入札制度)を利用して、3人の日本人スター選手が同時期にメジャー入りを決めたのは、同制度が登場してから初めてのことだ。以前から日本では入札制度の見直しを求める声が出ていたが、今回は松坂人気による入札額の急騰を鑑みたバド・セリグ・コミッショナーや、レッドソックスとの入団交渉時に不信感を表明した代理人のスコット・ボラス氏など、遂に米国サイドでも入札制度への批判が出始めた。以前から同制度を“百害あって一利なし”と考えていた立場から、改めて同制度の存在意義について考えてみたいと思う。

 このオフを見てもわかるように、日本人スター選手のメジャー流出という動きは、とどまりをみせるどころか拡大の一途を辿っている。FA選手のメジャー移籍では何の補償も得られない日本のチームからしてみれば、どうせ選手を失うなら多少なりとも金銭を受け取れる入札制度を利用した方が損失は少ないと考えても仕方がないところだろう。しかし、たとえ今回西武が約60億円の入札金を得たところで、松坂投手を失った中長期的な経済効果は観客動員も含め明らかなマイナスだ。つまりFA移籍だろうが、入札制度を利用した移籍だろうが、根本的には日本球界の損失には変わりなく、現状のまま甘んじていれば更なる人気低迷につながってしまうのではないか。

 以前にもこのコラムで持論を述べさせてもらったはずだが、スター選手が流出するならやはりその分を補充しなければいけない。確かに最近はアジア地域の選手と契約するチームが増えてきたが、それだけでは物足りない。やはりメジャーから実績ある現役選手を逆輸入するぐらいでないと、劇的な効果は期待できないだろう。

 多少極論かもしれないが、現在の入札制度は日米間の“金銭トレード”といえるのではと思っている。そのためメジャー・サイドでは、ある程度金銭的な余裕のあるチームしか応札できないし、さらに最高額で応札したチームしか独占交渉権を獲得できないため、今回のような入札額急騰を招いてしまう。さらに言えば、支配下選手の移籍に関することなのに、日本のチームは入札額を受け入れるかどうかを決めるだけで、入団交渉にまったく介在できないのも、納得できない部分だ。

 ここで、入札制度をあくまで日米間のトレードだと考えてみよう。もし金銭だけでなく選手間トレードも認め、日本の対象チームが応札する全メジャー・チームと交渉できるようになれば、もっと日本球界にとって有意義な選手交流ができるのではないだろうか。そうすればメジャー球界でも獲得に興味あるチームは今以上に応札できるようになるだろうし、不公平感はかなり是正されるだろう。さらに日本球界でも、移籍選手に代わる実績あるメジャー選手を獲得できる可能性もあり、成績ばかりか人気面でも大きな補填になるはずだ。

 仮に入札制度で日米間の人的トレードを認めたとしても、大きな障害があるのも事実だ。今回の松坂投手の入団交渉を見ていても明白だが、日米球界にはあまりに大きな年俸格差が生じてしまっている。仮にトレードでメジャー選手を獲得しても、10億円を超えるような年俸を払えるような日本のチームは限られてくるだろう。だがそれも、日米の球団間で交渉できるようになれば、解決できないこともない。最近メジャー球界では頻繁に行われていることだが、複数年契約かつ高額年俸選手をトレードする場合、放出チームが受け入れチームに対し、選手の年俸総額の一部を肩代わりするシステムがある。これを利用すれば、どんな大物メジャー選手でも、日本球界の支払い能力を超えることなく獲得することができるのだ。

 せっかく米国サイドから入札制度について見直す声が出てきた今こそ、日本球界も積極的に話し合いに応じるべきだろう。何度も繰り返すが、現行制度で納得している限り、日本球界にもたらすものは負の遺産ばかりだ。コミッショナー事務局を中心に、素早いアクションを期待するばかりだ。

 それと同時に、すっかり消沈ムードの球界再編問題に関しても、本腰を入れてほしいものだ。球界の人気を復活させるカンフル剤として、“第2の新庄選手” を誕生させることがどれだけの効果をもたらすことか。今年も石井一久投手らが日本球界に復帰したように、今後もメジャーで活躍する日本人選手たちのUターン現象を加速させるためにも、彼らが魅力を感じてくれるような球界づくりを目指していかねばならないだろう。そういった面からも、球界上層部が日本人メジャー選手やOBたちと交流、意見交換を行っていくべきなのではないだろうか。

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