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松坂が背負った重圧。 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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posted2006/12/20 00:00

 松坂大輔が、ボストン・レッドソックスと6年契約、年俸総額5200万ドル(約60億円)で移籍合意に達した。ポスティングによる入札金額5111万ドルを合わせると1億311万ドル(約120億円)。レッドソックスは、松坂に1年あたり約20億円を使ったことになる。

 むろん、レッドソックスは松坂にそれだけの価値があると判断したからその金額を使ったわけで、われわれがあれこれいうことではないと思うが、その途方もない金額が松坂にどういう影響を与えるかには興味がある。

 まず、交渉の代理人に、法外な金額を要求することで知られるスコット・ボラス氏を立てたことで、金にこだわる男だという印象を与えた。じっさい、ボラス氏は、交渉の当初、松坂には5年総額で1億ドル(約117億円)の価値があると主張し、レッドソックスがその要求をのなまければ松坂を日本に帰すと脅した。

 それに対してボストンの新聞は腹を立て、こう主張した。

 「松坂などいらない。アストロズからFAになったロジャー・クレメンスを獲ったほうがずっといい」

 地元の新聞を敵に回してしまったのである。

 その様子を見て日本でも多くの人が心配し、桑田真澄などはこう忠告した。

 「ぼくらはスポーツマンシップにのっとらなきゃダメなんですよね。そこを小さいころから教えてもらって、甲子園、プロとやってきた。お金に汚いというイメージを松坂くんにつけてほしくない」

 結局、交渉の最後の段階で、松坂自身がボラス氏にレッドソックスの出した条件に歩み寄るように指示して、要求の約半額の6年5200万ドルに落ち着いたということだが、もし松坂が期待どおりのはたらきをしなかったら、クレメンスを獲ったほうがよかったという主張がたちまち蒸し返されるだろう。

 また、アレックス・ロドリゲスの例もある。彼は2001年にシアトル・マリナーズからFAになり、テキサス・レンジャーズと10年2億5200万ドル(約277億円)という史上最高の巨額契約を結んだが、その巨額さゆえに、敵地ではつねにブーイングを浴び、地元のテキサスではその金額に見合ったはたらきをしていないと批判されて、困り果ててファンにこう弁明しなければならなった。

 「自分の年俸が多すぎるというなら、一部を返上してもいい。それをチームの補強費に使ってもらいたい」

 この巨額契約を結んで一躍有名になった代理人がボラス氏だった。

 結局、ロドリゲスはレンジャーズに3年しかいることができずにニューヨーク・ヤンキースにトレードされたが、ヤンキースでも存在感を示しているとはいえない。

 松坂も、ロドリゲスほどではないが、相当巨額の金をレッドソックスに使わせてボストンの地に降り立つのである。チームメイトの中には、それを納得しない者もいるかもしれない。松坂にメジャーリーグでやれるだけの力があることは分かっているが、その力を発揮するには、そうしたさまざまなプレッシャーを日々はねのけていかなければならないのである。

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