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バルセロナ、栄光の予感。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2004/10/25 00:00

バルセロナ、栄光の予感。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 8カ月間、モンジュイックでは負け知らずでいたエスパニョールだが、FCバルセロナにはかなわなかった。エスパニョールがバルサに勝利したのはこの10年でも数えるほど。まだ、サリア・スタジアムがホームだった1996年、バルサに圧勝したときが懐かしく思える。カマーチョが監督で、確か、あの試合ではフィーゴが退場すればラドチェンコがペナルティを決めるなど、サリアは最高の雰囲気をかもし出していた。それが、気がつけば一方的なダービーになっている。ちなみに、カンプ・ノウでは20年間勝てていない。

 FCバルセロナには負傷者が続出していたから、なおさらチャンスだった。エジミウソン、ジェラール、モッタ、ガブリ、シルビーニョ、ジュリ、ジョルケラ、と7人もの故障者を抱えている状況に、「グラウンドではそんな考えはしないけど、ケガに対して精神的に不安を抱くこともあるね」とシャビはいう。エスパニョール戦の試合前、バルサの選手たちはエジミウソンを元気づけるために「頑張れ、兄弟」と書かれた黄色いTシャツで現れたが、この試合で今度はプジョールが負傷してしまった。

 ライカールトは10月16日のエスパニョール戦を「あまり、内容としてはよくない。だが、結果としては最高だ」と評価したが、ほんとにそのとおりだった。ほんの数日前にマジョルカで交通事故を起こしたエトーも、2日前に南米のワールドカップ予選を戦っていたロナウジーニョも、ケガこそせずに戻ってきたけれども、いつもの輝きは失っていた。それでも、デコの華麗なゴールが9分に決まると、逃げ切った。すべては、ライカールトの作戦勝ちとも思える。バルサは開始早々からプレッシャーをかけた。ロナウジーニョ、ラーション、エトーら3選手はボールを追いかけ、中盤もプジョールもラインを高く保った。カウンターが得意のエスパニョールにはチャンスのはずだが、中盤でのプレスまでもが厳しいとなると絶妙なカウンターが繰り出せない。タムードはいつも孤立無援だった。

 ひとり、この戦術の裏を読んでいたのが、デ・ラ・ペーニャだった。最終ラインをセンターサークル付近まであげることで、プジョールのボールタッチも増える。バルサが悠々とボール回しを心がけるとき、デ・ラ・ペーニャはプジョールだけを狙っていた。2度ファウルを取られ、1度はカウンターが決まった。

 サッキの講習会にも出席したことがあるというライカールトだが、さすがに前半の立ちあがりにはサッキも喜んでくれただろう。ただ、「あの講義は眠くてね」という冗談も本気にしたくなるほど、後半はペースを崩し、ポストを叩かれるという同点にされてもおかしくないシーンが終了間際には訪れた。それでもしのいだのだから、少なからず、バルサには運もある。

 この勝利で、バルサは2位バレンシアを5ポイント引き離し、レアル・マドリーとは9ポイントも差が開いた。デコ、ロナウジーニョ、ジュリ、エトー、シャビと日替わりでゴールハンターが生まれるのは、いい傾向だ。ロナウジーニョだけではないのだ。

 そこで早くも、チャンピオンチームの「いろは」を考えてみた。

デポルティーボ(1999−2000)のときは「各ポジションに2選手のオプションがあった」。

 レアル・マドリー(’02−’03)のときは「どこからでも、ゴールを奪えた」。

 バレンシア(’03−’04)のときは「失点が少ない。とにかく、ホームで負けない」。

 もうひとつ、オマケにファン・ハール率いるバルサ(’98−’99)のときは「派手なゴール・シーンを何度も拝んだ」記憶がある。

 いまのバルサと共通する要素がある気がしてならない。負傷者が続出していることから得失点のバランスまで。しかも、ライバルと思われていたクラブがくすぶってもいる。カタルーニャの地元紙はもう、何かとクライフ時代などの過去のデータと比べては優勝モードに入ろうとしている。長い間、タイトルと無縁だった反動か。でも、油断は禁物。「バルセロナにはかなり上を行かれているけど、まだ数多くの試合が残っているから」というのは、イバン・エルゲラだ。11月のクラシコで、先が見えてくる。

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