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生え抜き軽視のレアル・マドリー。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byMaurizio Borsari/AFLO

posted2008/05/08 00:00

生え抜き軽視のレアル・マドリー。<Number Web> photograph by Maurizio Borsari/AFLO

 3節を残してレアル・マドリーが優勝を決めた。

 もちろんファンは大喜びだ。中には「もう1節待っても良かったのに」と思った者もいたに違いないが。そうすれば地元サンティアゴ・ベルナベウで、うなだれるバルサを尻目にビクトリーランを楽しめたかもしれないから。

 それはさておき、優勝決定の2日前、スポーツ紙マルカがこんなニュースを報じた。

 スペイン代表FWビジャを狙うレアル・マドリーがバレンシアに300万ユーロ(約48億円)プラス選手1人をオファー。

 これを読んで、溜め息が出た。

 金額に驚いたわけじゃない。払うのはビッグクラブ。狙っているのはリーグ最高級のストライカー。300万は莫大な額ではあるけれど、まあ妥当だろう。

 溜め息は、“選手1人”がレアル・マドリーのカンテラ出身デラレッドあるいはネグレドだということにガッカリしたからだ。現在2人はそれぞれヘタフェとアルメリアに所属しているが、レアル・マドリーは買い戻しの権利を行使し、戻ってきたところをそのままバレンシアに譲り渡すらしい。

 スペイン代表にも選ばれている攻守万能デラレッドの買い戻し自体は4月初めの時点で決定的とされた。そのとき「ワンタッチ、ツータッチでボールを捌き、プレッシングにきた相手に肩すかしを喰らわせるサッカーができる彼は、今のレアル・マドリーにすっぽりハマるかもしれない」と考えたことがある。ガッカリはそれ故である。

 ネグレドも同様。スペインには珍しい体格の良いフォワードで、運動量、スピードもさることながら決定力が秀でている。ファン・ニステルローイのサブは無論のこと、ツートップを組ませるのも面白いし、ラウールとも合いそうな気がする。

 だが、失望する一方で、このニュースに「やはり」を感じたのも確かだ。

 世紀が替わってからこちら、レアル・マドリーには自分たちで育てた選手を重用しない傾向がある。

 古いところではカンテラ史上最多得点者のポルティージョ(オサスナ)や、複数のポジションをこなしたディフェンダーのメヒーア(ムルシア)。彼らにはもっとチャンスを与え、信頼してやるべきだったという声を今でも耳にする。今季でいうならソルダードだ。昨年オサスナで15得点した力を発揮できず、ベンチでただ腐って行くのみ。

 現リヴァプールのアルベロアは2年前、レアル・マドリーからデポルティボへ移籍する際、こんなことを言っている。

 「カンテラの選手のうち、トップチームに上がれるのは数人だけ。でも、上がったところでレギュラーポジションはまず与えられない」

 だから彼のように、エスパニョールのルイス・ガルシアのように、バレンシアのマタのように、早々に移籍を選ぶことが正解となってしまう。

 しかし、カンテラのそもそもの目的を考えると、この状況はおかしい。ビッグクラブは買い手クラブ、外国人部隊になるのが当たり前という風潮はあるけれど、育てる力を持つレアル・マドリーがそんなものにならう必要はないのだ。

 それより、3月初めのフランスフットボール誌で「欧州一」とされたカンテラにアイデンティティを見出したら素敵なことになると思うのだが、どうだろう。大金はたいてカカとクリスティアーノ・ロナウドを競演させるのも良いが、ホームメイドの選手が大半を占めるチームで頂点を目指すなんて、選ばれたクラブにしかできないことだ。私の知り合いの記者には、出身地を問わず、アスレティック・ビルバオのファンが多い。現場と舞台裏を熟知している彼らは、地元バスク出身の選手だけでチームを作り続けるロマンに惹かれるという。

 レアル・マドリーがビジャを求める理由の1つは、カルデロン会長がチームのスペイン色強化を目論んでいることにある。もう一歩踏み込めば、カンテラ重視政策も打ち立てられるはずなのだが。

■関連コラム► 隣の芝生は青く見える。レアル首脳陣の迷走ぶり。 (2008年12月9日)
► ファビオ・カペッロ 「レアル・マドリーへの遺言」 (2007年7月12日)

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