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サッカー協会の人脈不足を憂う 

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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photograph byTamon Matsuzono

posted2007/12/17 00:00

サッカー協会の人脈不足を憂う<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 サッカーの日本代表のオシム監督が脳梗塞で倒れたのは、11月16日だった。

 症状は非常に重いという報道だったので、後任の監督には誰がなるのだろうと思った。

 すぐに、岡田武史氏と西野朗氏の名前が思い浮かんだ。

 2人とも監督としての実績は十分だ。岡田氏は、フランスワールドカップのときに日本代表を初めて本大会に導き、Jリーグでは横浜マリノスを'03年、'04に連覇させているし、西野氏はアトランタオリンピックでブラジル代表を破り、Jリーグではガンバ大阪を'05年に優勝させている。

 ただし、これは日本人の監督に限ればということだ。もしぼくがもっとサッカーの知識が豊富で世界の事情に通じていれば、べつの監督の名前も思い浮かべたかもしれない。じっさい、11月27日付けの東京中日スポーツは、旧ユーゴスラビア出身のミルチノビッチ氏が代表監督に興味を示していると報じて、ミルチノビッチ氏のつぎのようなコメントを掲載した。

 「一日も早く友人のイビチャ(オシム)がよくなることを心から祈っている。本当に残念だ。この場で自分の将来について語りたくない。日本代表の監督に興味があるともいいたくない。ただいえることは、私はいま空いているということだ」

 ミルチノビッチ氏は、メキシコ、コスタリカ、アメリカ、ナイジェリアを率いて4度ワールドカップに出場し、4度とも本体会で決勝トーナメントに進出している監督だ。ワールドカップ出場請負人といってもいい。

 しかし、結局、素人のぼくがありきたりの知識で考えた予想どおりの結果になった。12月7日に岡田氏の監督就任が発表されたのである。

 ぼくはこの決定に文句をいうつもりはない。重要なのは日本代表がアジア予選を突破することで、それができるなら誰が監督でもいいのである。

 だが、日本ではおそらくもっともサッカーの知識が豊富で、世界の事情にも通じているはずの日本サッカー協会の人々が、ありきたりの知識しかもたない素人のぼくでも思いついた程度の人選ですませたことにはいささかおどろいている。その間に外国人監督の名前は一度も挙がらなかった。人選を担当したのは協会内の技術委員会だそうだが、これならぼくでも技術委員がつとまるのではあるまいか。

 しかし、考えてみれば、フランスワールドカップ以後、トゥルシエ、ジーコ、オシムと3人の外国人が代表の監督になったが、協会が直接交渉させた人物は1人もいないのである。

 トゥルシエはベンゲルの推薦で、そのベンゲルは名古屋、ジーコは鹿島、オシムは千葉の監督だった。つまり、トヨタ、住友金属、古河電工が連れてきた人物たちを利用、もしくは横滑りさせただけなのである。

 そして、見わたしてみたところ、こんどはそういう人物がいなかった。きっとそういうことなのだろう。日本サッカー協会は世界に通じる人脈を持っていないことをこんどのことであらためて露呈したのである。

 ワールドカップは、いうなれば世界最高の美男美女が集まるダンスパーティーだ。そこに、まだ10年ばかりの経験しか持たない後進が、人脈もなしに打って出るというのは何とも心細い。うまく踊れず、壁の花にならなければいいが、とぼくはそれをおそれる。これは練習マッチでも予選でも本番でもいえることだ。

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