MLB Column from USABACK NUMBER

ファンも命がけ レッドソックス対ヤンキース 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2005/10/06 00:00

ファンも命がけ レッドソックス対ヤンキース<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 今季も、レッドソックスとヤンキースが、そろってプレーオフに出場することになった。両チームそろってのプレーオフ出場は2003年から3年連続となるが、今年も、昨年・一昨年のような熱闘が繰り返された場合、両チームのファンにとって、10月が疲労困憊のひと月となることは間違いがない。

 プレーオフの間、ファンは、試合のスケジュールを最優先して生活の予定を立てることになる。たとえば、こちらでは、一週間分の食品の買い出しなど、外出を要する雑用は土曜にすませるのが普通だが、ヤンキースがレッドソックスを破ってプレーオフ進出を決めた10月1日(土)の買い出しは、いつもの倍の時間がかかった。午後1時20分の試合開始までに雑用をすませようと、ボストン辺りの住民が、皆、午前中に集中して外出したからだ。道路も店も通常の土曜日の倍以上込んでいたから時間がかかったのも仕方がないが、どの店に行っても、客も店員もレッドソックスのTシャツを着た人ばかりで、町中にやる気がみなぎっていた(こちらでは、重要な試合に際しては、たとえテレビ観戦でも贔屓チームの衣料を身につけて応援するファンが多い)。

 この日の試合、ランディ・ジョンソンの好投でヤンキースが快勝、力を入れて応援したレッドソックス・ファンにとっては、疲れる結果となった。私も、午前中込んだ中で買い物をした疲れに、ヤンキースに地区優勝を奪われたショックが重なって、すっかり夕飯を作る元気をなくしてしまった。というわけでレストランへと出かけたのだが、夕飯を作る元気をなくした人は私だけではなかったようで、いつもはすぐに入れるレストランの入り口に行列ができていたので、また疲れてしまった。

 試合開始前と終了後に町中が混雑するのと反対に、試合中、ボストンの町はゴーストタウン化しているに違いないと思うのだが、重要な試合の際は、いつも、球場かテレビの前かのどちらかにしかいないので、本当にゴーストタウン化しているかどうかは、直接確認したことがない。

 ただ、つい最近ある医学雑誌に載った論文を読む限り、試合中、ボストンの町がゴーストタウン化していることは間違いなさそうである。この論文、ハーバードの研究者が「救急医学誌」の最新(10月)号に発表したものだが、彼らの調査によると、昨年のア・リーグ選手権・ワールドシリーズの試合中、ボストン市内の救急外来受診数は、通常と比べ平均20%も減少したという。さらに、テレビ視聴率の高かった試合ほど受診数の減少が著しかったといい、重要な試合ほど患者は受診を我慢したようなのである。

 試合中、病人が病院に行くのを我慢するほどだから、町がゴーストタウン化しても不思議はあるまいと結論した次第だが、それにしても、「痛い、苦しい」とうめきながら、「でも、この試合の結果を見届けるまでは病院には行かない」と我慢している病人がいるのだから、レッドソックス対ヤンキースは、ファンにとっても命がけである。

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