MLB Column from WestBACK NUMBER

【番外編】なぜ同じ過ちを繰り返し続けるのか 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byMasaki Fujioka/JMPA

posted2008/08/29 00:00

【番外編】なぜ同じ過ちを繰り返し続けるのか<Number Web> photograph by Masaki Fujioka/JMPA

 MLBの話題を提供する本来の趣旨からは逸脱してしまうのだが、今回はどうしてもこの話題を取り上げずにはいられない心境だったことを察して頂きたい。それほど北京五輪での日本代表チームの惨状は、嘆かわしく、腹立たしかった。

 ただし冒頭の不満をぶつける相手は、星野監督でもなければ五輪を戦った選手たちでもない。日本代表チームを束ねるNPBであり、日本プロ野球界の中枢にいる責任者たちに対してだ。彼らの怠慢、無為無策ぶりをこれ以上許していいのだろうか。

 そもそも彼らは、国際大会にプロ選手を派遣する重要性をどれだけ認識しているのだろうか。日本のスター選手たちが続々メジャーに流出し、現在では当たり前のようにメジャーリーグの公式戦がTV観戦できるようになった状況下では、日本プロ野球の人気を維持していく上で、格好の存在なのが国際大会だ。2年前に行われたWBCにおいて日本代表チームが優勝を飾った際の盛り上がりをみれば一目瞭然だろう。サッカーのようにボーダレスになってきた野球界でも、国際大会で活躍し、日本の野球の質の高さを証明することでファンを吸引していくしかないのだ。それなのに……。

 本来ならプロ選手を派遣した時点で、一般の人々は、韓国代表チームやマイナー選手主体のアメリカ代表チームに勝って当然であって、キューバ代表チームと互角以上の戦いをすると考えてきたはずだ。それが今大会に至ってはそれら3チームに1勝もできなかったのだ。ファンの怒り、失望は当然のことだろう。 2000年のシドニー大会からプロ選手を派遣して以来、結局メダル獲得はアテネ大会の銅メダルのみ。アマチュア選手だけで臨んでいたそれ以前の大会ではずっとメダルを取り続けていたことを考えれば、上層部の人間たちが五輪に向けた戦略をまったく持っていなかった現れだろう。

 実際端から見ていて、NPBの代表チーム選考は無責任としか思えない。大会ごとに場当たり的に監督を選んで、後は現場に任せっきりという体質が、今回の代表チームに関する報道から窺い知れる。その端的な例が、3位決定戦終了後の星野監督の発言だろう。

 「最初の試合で投手も野手も(日本とは違うストライクゾーンに)怖々やってしまった。他の世界でやっている感じ」

 さらにいくつかのスポーツ紙サイトで、予選第1戦のキューバ戦後に、好投できなかったダルビッシュ投手が国際球に違和感を持っていたと報じられていたし、帰国後に上原投手がNPBに対し国際球を使用することを要望したい発言をしていたことも報じられた。これらの使用球やストライクゾーンの違いは、今大会に限ったことではなくずっと以前から指摘され続けてきたことなのだ。確固たる長期戦略があれば、解消できた問題だったはずだ。

 長年メジャーの取材を続け、日米の選手、関係者から話を聞いてきて、日本のプロ野球は“投げやすく”かつ“打ちやすい”ボールを使い、セ・パ両リーグ間で違ったストライクゾーンを採用していると感じている。さらに日本のストライクゾーンは国際レベルと比較して狭く、打者が“打ちやすい”もののようだ。つまり自分たちが勝手に国際舞台で戦う“不利な条件”を用意しているということなのだ。そうでなくてもシーズン中に行われる五輪の場合、あまりに準備期間が乏しいのにこの有様だ。もしNPBに国際大会を戦う戦略眼があったのなら、少しでも選手たちが国際舞台で戦いやすいように、とうの昔に国際球に近いボールを使用球と国際試合に近いストライクゾーンをプロ野球で導入していたと考えるのは自分だけだろうか。

 日本のように場当たり的な対応で失敗したのが、スター選手を送り込んでいれば勝てると考えていたNBAでありアメリカ・バスケットボールだった。だが世界最高峰にいる彼らでさえアテネ大会の失敗を猛省し、2005年にフェニックス・サンズ(NBA)とアリゾナ・ダイヤモンドバックスのオーナーとして実績のあるジェリー・コランジェロ氏を現場の総責任者である統括ディレクターに任命。コーチ陣も4年間同じ陣容で国際舞台を経験しながら、今回の北京大会で見事に失地回復を果たしている。

 残念ながら日本の野球にはもう五輪という舞台はない。残された舞台はWBCだが、第2回大会は半年先に迫っている。こちらで話を聞く限り、第1回大会で優勝を逃したアメリカはもちろん、これまで五輪とは縁遠かったがWBCで国際大会の面白さを知ったドミニカ、プエルトリコなども次回大会にむけて必死になっているという。現状のままでは、日本代表チームが予選で敗退してしまう可能性も十分だろう。

 これまでのように現場にすべてを押しつけるのではなく、プロ野球全体で国際大会に臨む姿勢をみせない限り、もう日本代表チームが勝っていくのは無理だろう。ひいてはファンのプロ野球離れを加速しかねないという事態を、もっと関係者は危機感を持って捉えるべきなのではないか。

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