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デジタル地上波で「スタジアム離れ」加速? 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2005/01/11 00:00

デジタル地上波で「スタジアム離れ」加速?<Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

 2005年、セリエAのTV観戦が更に進化する。リーグ後半戦が始まる1月22日から、イタリアの民間放送局2社のデジタル地上波放送で、セリエA17チームの試合が中継されることになった。

 大手TV放送「メディアセッテ」は、この度セリエAの中で特に人気の高い、ユベントス、ミラン、インテル、ローマを含む8クラブのホームゲーム放映権を獲得した。また「ラ・セッテ」は、フィオレンティーナ、パレルモ、レッチェなど、地元サポーターが熱い声援を送る地方都市9クラブと契約を結んだ。2社合わせて1億5700万ユーロと多額の出費を伴う新たな試みは、世界一の規模を誇るメディアの帝王・マードック氏が保有する衛星波「スカイ」に対抗してのもの。格安プライスを打ち出したデジタル地上波の進出により、サッカーは自宅観戦が「当たり前」になるかもしれない。

 2カ月前にスタジアム離れの深刻化を伝えたばかりだが、スタジアムでの生観戦のデメリットは、一向に改善されていない。私事で恐縮だが、今季、ある試合の取材中にスタジアム近辺で駐車違反の罰金(40ユーロ)を科せられ、スタジアムへ行くことの難儀さを体感した。交通機関が日本ほど発達していないイタリアでは、マイカーに頼らざるを得ないし、サポーターの立場になって考えると、駐車場探しのために数時間前からスタジアムへ出向く準備をしなければならない現状は、とても「快適」とは言い難い。また、先日はセリエBのクロトーナ−ヴェネツィア戦において、紙爆弾がピッチに投下されたが、危険を伴うスタジアムでのサッカー観戦は、一般市民に恐怖感を与えている。

 さて、マルチ番組の購入(例えば、映画とサッカー、スポーツとサッカーなどの抱き合わせ購入)を余儀なくされる「スカイ」に対し、新参者のデジタル地上波サイドは、サッカー1試合につきOOユーロと、合理的な単価システムなのがうれしい。例えば「ラ・セッテ」の場合は5試合で10ユーロ、「メディアセッテ」は6試合で18ユーロのプリペイド。サポーターの懐に負担をかけないだけでなく、単価制なので、家での観戦を変に「義務付ける」ものでもない。特別に生で観戦したいカードがある場合などは、スタジアムに出向くことも躊躇しないで済むというわけだ。

 イタリア北部、中部での普及率が70%、南部ではまだまだと、衛生波に比べると出遅れた感のあるデジタル地上波放送。しかしながら、TV観戦がイタリア人の間で定着していること、今回の改革がサポーターのニーズに応えていることを根拠とし、いずれデジタル地上波が爆発的人気を呼ぶと、先の民間放送会社2社は確信している。

 チケット代は高いし、特に冬場は、寒いうえに雪や凍結といった不都合もある。ましてや、危険に遭遇することすら起こり得る。となると、TV観戦が最もリスクの少ない手段かもしれない。そんなことを考えながら、完全防寒着でスタジアムへ向かう、きょうこの頃の私である。

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