佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

悔しさが滲む、母国GP 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta

posted2004/10/18 00:00

悔しさが滲む、母国GP<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta

 「悔しいですよ、悔しくて寝付けそうにない」

 今シーズンの集大成となるはずの日本グランプリで、佐藤琢磨は表彰台にあと一歩の4位に終った。

 その遠因は台風22号にあった。予報では土曜日午後に三重県を直撃するとのことで、主催者側は素早く予選中止を決定。10月9日はサーキットが全面封鎖、10月10日がF1史上初の予選・決勝同日開催となった。結果的に日曜日午前中の予選はセミ・ウエット路面、午後の決勝はドライ路面となったのだが、予選が一発勝負で、普段なら45分間×2回の予選前の試走ができなかったことが“悔しさ”につながるポイントだった。

 金曜日の試走が終った時点でのインタビューで、記者の誰かが「もし明日予選がキャンセルになって日曜日にやるとなると、全チームがイーブンの条件ですね?」と訊くや「そうですか? 同じ条件じゃないと思いますよ」と、琢磨は切り返した。

 琢磨の主張は、タイヤに関するデータの蓄積がイーブンではないというのだ。なぜならBARホンダは今年からタイヤをブリヂストンからミシュランに換えた。昨年までのBSタイヤのデータがまったく役に立たないということはないにしろ、数年間ミシュランを使い続けているチームとは差がつくことは必定。ほとんどノーマークだったラルフ・シューマッハーが予選2位につけ、決勝でも快走したのは、中国グランプリで早期リタイアとなったことで乾いて行く路面に対しタイムアタック順があとの方だったというラッキーな面も確かにあったが、ミシュラン・タイヤ・ユーザーの雄ウイリアムズ・BMWが、BARホンダより正確にタイヤのセットアップを実現できたことが大きかったに違いない。

 タイヤのデータに乏しいBARホンダは、当日の路面状況がどう変わってもいいように佐藤琢磨とバトンのセッティングを変え、ピットストップ戦略も琢磨3回、バトン2回と分けた。リスクを分散したのである。結果的にはバトンのセッティングと戦略の方が雨に洗われた鈴鹿の路面にはあっていたし、間の悪いことに予選で琢磨よりワン・ポジション下位だったバトンの方が、スタートには有利な外側のポジションからのスタートだった。結果論ながら琢磨のが予選5位だったら、表彰台に載ったのはバトンではなく琢磨の方だったろう。

「応援してくれたファンのみんなのことを考えると悔しい」と何度も何度も繰返す佐藤琢磨を見て感慨を新たにした。鈴鹿の戦績は5位→6位→4位なのだからなにも悔やむことはない。その4位を悔しがるほどの高みに、佐藤琢磨もBARホンダも達したということなのだろう。

 オンボードTVで観ると1コーナーの進入直前、琢磨は先行されたバトンに一瞬並びかけて引いているように思える。あそこで引かなかったら両者当っていただろう。

しかし、当っても強引に前に出る道はなかったのだろうか? ひょっとして(大事に行かなければ……)という思いが佐藤琢磨になかったか? ルノーとのコンストラクターズ・ランキング2位争いが依然完全決着していないことを考えると、そんな勘繰りもしたくなる。

 すべてのプレッシャーから開放されて伸び伸びと“攻める”佐藤琢磨の姿を、10月24日のインテルラゴス(ブラジル)で見たいと思うのだ。

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