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第6回:ワールドカップ一次予選 オマーン戦直前レポート「三都主の左サイドが鍵を握る」 

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木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2004/02/16 00:00

第6回:ワールドカップ一次予選 オマーン戦直前レポート「三都主の左サイドが鍵を握る」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 こんな調子で大丈夫なのか……、先日のイラク戦を見て、2月18日に行われる2006年ワールドカップ(W杯)一次予選初戦のオマーン戦へ不安を感じた人も少なくなかったかもしれない。それほど日本はミスが多く、攻めの形もつくれず、自分たちのリズムで試合ができなかった。

 1月下旬から合宿を行い、各Jクラブに先駆けて始動したとはいえ、選手のコンディションはまだ本来のものではない。それゆえにリズムにも乗れずにミスも出たという面もあったと思うが、それを差し引いても気になったことがある。攻撃のコンセプトがチームで合致しているのだろうか、ということだ。

 ジーコ監督のこだわりのひとつに、三都主の左サイドバックでの起用がある。攻撃志向の三都主には守備の不安があると指摘されても、監督は一向に動じる様子もなく、これまで使い続けてきた。オマーン戦を想定した12日のイラク戦を前に同選手が右ハムストリングを痛めた時も、試合に間に合うのならばと前日練習を休ませて、試合でフル起用した。つまり、ジーコ監督の頭の中には、三都主は欠かせない存在であり、彼がサイドを攻め上がって切れ味のいいクロスを入れ、それにFWが合わせて相手ゴールネットを揺らすという絵が描かれている。これはおそらく、今後もよほどのことがない限り変わらないだろう。

 だが、監督が描いているこの“絵”が選手にどこまで描けているのか。

 これまでも何人かの選手から「サイドを使おうとした」という類の発言はされている。だが、実際に三都主を使おうという意図は、あまり見られなかった。彼をサイドで使うということは、三都主にどうやってサイドを上がらせるか、彼がいいクロスを上げるためには、誰がどこでどう顔を出して彼をサポートするのかということだが、これらの具体的な図案が他の選手の頭に描かれているのか。

 攻撃のコンセプトという点では、ここ2試合でFW久保からMF藤田へラストパスを出すというシーンが何回かあった。藤田のセカンドストライカー的な要素を考えると何でもないシーンのようだが、彼ら本来の役割が逆転していて、誰が点を獲るのか、誰がどう組み立てるのかという構図にズレがあるようで、気になった。

 三都主を左サイドで生かすことも、そこから誰に点を獲らせるかということも、連動したチームの攻撃へのイメージの問題だ。それがプレーに見られないから、見ている者を不安にさせてしまったのだろう。チームは13日から直前準備合宿に入っているが、試合までの間に、この点をもう一度確認する必要があるのではないか。

 オマーンはカウンターからサイドを突く攻撃を得意としている。しかも、中盤の選手、特にMFファウジ・バシル・ドゥールビーンが中から右サイド、つまり日本の左サイドへ流れてプレーしてくる。FWハニ・アルダバトは負傷により今回不在だが、ドゥールビーンはオマーンが韓国を抑えてグループ1位通過を決めたアジアカップの最終予選でも7得点を決めている。要注意人物だ。

 おそらく、三都主が攻めあがったあとのスペースが狙われて、ここをケアすることになる宮本や左ディフェンシブハーフの遠藤らの負担は大きくなるだろう。宮本や遠藤がサイドへケアに出たときに、中盤に穴が開くとそこを使われる可能性も大きいので、遠藤とペアを組むと思われる稲本は、この辺のバランスを見ることも必要になるだろう。

 右サイドバックの山田暢は三都主の上がりを見ながらのプレーになるが、相手が三都主のサイドを意識してそちらへ寄り気味になることになれば、カウンターから右サイドを攻める機会も出てくる。タイミングを見ながら、山田暢が時々右を深く攻め込んで、クロスを入れることができればより効果的だろう。

 先日のイラク戦でミスの目立ったDF坪井だが、気を引き締め直すいい薬になったはずだ。ジーコ監督はそのまま起用する様子で、スピードがあり1対1に強い坪井は必要な存在ということだろう。

 チームは直前合宿でセットプレーのパターン練習にも時間を割いている。中村や小笠原らセットプレーのスペシャリストの存在を考えるとこれも日本にとっては期待できる得点パターンだが、三都主と山田暢にはクロスボールの練習も入念にしておいてもらいたい。なにしろ、サイドから切れ味のいいクロスで1点なのだから。チームとしてこの理解がしっかりすれば、オマーン戦だけでなく、W杯予選での勝利という絵がより鮮明に描けるようになるのではないだろうか。

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