初戦(6月14日)が高地ブルームフォンテイン(標高1359メートル)でカメルーンと。第2戦(19日)が海辺のダーバンでオランダと。第3戦(24日)がまたも高地ルステンブルク(標高1500メートル)でデンマークと。
2010年ワールドカップで、日本はE組に入って戦うことになった。相手も日程も楽ではない。冷静に考えれば、日本の最下位はまずまぬかれがたいところだろう。フィジカル面で最も劣り、個々の想像力や創造性にも優れた点がほとんど見当たらないからだ。
いいかえれば、日本の勝機は奇襲作戦に見いだすしかないのに、岡田武史采配には奇襲の気配がまったく感じられない。オシムやトゥルシエの名をことさらに持ち出しても、死んだ児の歳を数えるようなものだが、「世界をあっといわせる」という謳い文句が空念仏に終わる可能性はいまのところかなり高い。
最下位候補筆頭・日本の数少ない勝機は持久戦にあり。
が、チャンスは皆無というわけでもない。冒頭に掲げた日程と開催地をもう一度眺めていただきたい。実力的に隔たりのあるオランダや、高地に馴れているカメルーンを倒すのはむずかしいかもしれないが、高地に不馴れで足技の器用さに欠けるところのあるデンマークならば、もしかしてぎゃふんといわせることができるのではないか。
もちろん、直接的なコンタクト勝負になれば、日本人のひよわな肉体がヴァイキングの子孫たちに押しつぶされる様子は容易に察しがつく。が、酸素の薄い高地での持久戦に相手を引きずり込み、速くて低いボールで終盤にしつこく勝負をかければ、デンマークの自滅を誘うこともできるのではないか。
ただそのためには、相当の走力が求められる。親善試合でオランダに完敗したときのように日本が先に疲れてしまっては、いま申し上げたシナリオは、まったくの画餅にすぎなくなる。
無様な姿をさらさぬためにも「高地での戦い方」を学ぶべき。
という意味では、日本代表が大会直前の合宿地にスイスのザースフェー(標高1800メートル)を選んだのは理に適っている。ここで心肺機能を鍛え、気温が低くて酸素の薄い土地に身体を馴らしておけば、ブルームフォンテインやルステンブルクでの戦いがずっと楽になるはずだからだ。
が、問題は期間の短さだ。メディアの報道を見る限り、日本代表はザースフェーで2週間の合宿をしたあと、南アの拠点ジョージに移るとある。ジョージは快適な海辺のリゾートだ。そこで最終調整を行い、数日後の初戦をふたたび寒い高地で迎えるという段取りは、はたして適切なものなのだろうか。断言できるだけの科学的根拠は私にはないのだが、現在の日本代表を見ていると、勝機は「会場の立地条件を生かした戦い方」以外に見いだせそうもない。
同時に私は、ドイツ・ワールドカップで暑さに当たってふらふらになり、ゲーム終盤で相手チームの乱打乱撃を受けてノックアウトされた日本代表の情けない姿は二度と見たくないと思っている。運動量をさらに上げる、とは岡田監督もいっているようだが、とにかくあと半年は「高地での戦い方」をしっかり身につけてもらいたいものだ。それが可能ならば、少なくとも「意気地のない負け方」だけはしなくてすむのではないか。
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筆者プロフィール
芝山幹郎
1948年金沢生まれ。東京大学仏文科卒。評論家・翻訳家。著書に『大リーグ二階席』『アメリカ野球主義』『映画は待ってくれる』『映画一日一本』『アメリカ映画風雲録』などがある。訳書はジョージ・F・ウィル『野球術』、スティーヴン・キング『ニードフル・シングス』『不眠症』など多数。「イチローとモウリーニョはいつまでも見飽きない」そうだ。新刊は、ロバート・ホワイティングとのロング対談『新・イチロー伝説』(ベースボール・マガジン新書)。































