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<元祖・山ガールの「山」論> KIKI 「頑張らないと楽しい」 

text by

松山梢

松山梢Kozue Matsuyama

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2011/06/30 06:00

<元祖・山ガールの「山」論> KIKI 「頑張らないと楽しい」<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono
「なぜ登るのか?」「そこに山があるからだ」は昔の話。
山ガールからクライマーまで山を愛する3人が自分なりの
楽しみ方を紹介する“私の「山」論”。
今回は、山ガールの代名詞的存在のKIKIさん。
彼女が山に魅せられたきっかけや無理をせず山を満喫する方法を語る。

 子供の頃から自然の中で遊ぶ機会が多かったというモデルのKIKI。世に“山ガール”という言葉が登場する以前から山に魅了され、今でも月に2回は登山をする“元祖・山ガール”だ。

◇    ◇    ◇

 5年前、たまたま友人に誘われて八ヶ岳に登ったのが初登山。自分の足で辿りつける身近な場所に、まったく知らない風景があったということにとにかく驚いて、どんどん登山に熱中していきました。八ヶ岳に登る直前まで3カ月間パリに滞在していたのですが、日本の山の魅力に気付いてからは「もう海外行ってる場合じゃないな」って(笑)。

 それから次第に山に行く回数が増えていったのですが、実は私、日帰りの登山ってほとんどしたことがなくて……。頂上を目指していくというよりも、テントや山小屋に泊まって、なるべく長い距離を時間をかけて歩くのが好きなんです。そのほうが、日帰りでは知り合うことができない、たくさんの人と出会えると思います。山小屋では同じ山に登った共通意識があるので、初対面の人とも自然に話がはずむし、そこで働いている若い人たちと仲良くなって別の山に登る約束をしたりすることもあるんですよ。

携帯も鳴らない静かな空間だからこそ築ける人間関係。

 泊まりがけだと、一緒に登った友人との関係もより濃密になる気がします。他に気がそれるものがないので、お互いのいい面、悪い面も含めて、普段の生活では気づかない発見ができることがすごく嬉しいんです。携帯も鳴らない静かな空間だからこそ、密で飾らない関係が築けるのだと思います。

 それともうひとつ、山の楽しみはやっぱり景色。昔は花や紅葉をカメラで撮るおじさんの気持ちがわからなかったけど、何度も山へ行っていると同じ花でも場所によって雰囲気が違って見えるんです。だから、道を選ぶときもできるだけ違うルートを選ぶようにします。広い山の景色を見ていると、道もどんどん続いているし、尾根もずっと続いている。今見えている道の先がどこまで続いているのかが気になって、毎回行きたい場所が3つずつくらい増えていきますね。季節を変えたり、行くメンバーを変えたりしたいという欲も増えていき、時間も体も足りなくなってしまって(笑)。

 たとえ見晴らしの悪い曇りの日でも、楽しみ方はたくさんあります。遠くの景色が見えないぶん、落ち葉だったりきのこだったり、もっと身近なものに目がいくようになるんです。鳥の巣箱や道標の赤いテープ、おもしろい標語が書かれたちょっと特徴のある看板など、なんでもないものを撮って「誰が作ったんだろう」って思いを巡らせながら歩くのも楽しいですよ。

【次ページ】 「イマドキの山ガールとは全く違うかもしれませんね」

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KIKI

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