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命運を分けた移籍戦線。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2008/08/07 00:00

命運を分けた移籍戦線。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

 夏の移籍期間の半分が過ぎたので、これまでの主なチームの補強具合を独断で評価してみよう。

 まず、「優」を付けられるのはセビリアとビジャレアルとヘタフェ。毎度のことながら、この3チームは選手獲得が実に上手い。知名度は低いが実力のある者を探してきては、安価で手に入れるのだ。

 たとえばセビリアはジェノアのSBコンコやルマンのMFロマリック、リヨンのCBスキラッシ、ラシンのMFドゥシェル、マヨルカのSBフェルナンド・ナバーロ、ラヌースのMFアコスタらを獲った。去っていった(高額で売った)SBアウベス、MFケイタ、MFポウルセンと比べると、名前のインパクトは弱いが、どれも間違いのない好選手である。中でもアルゼンチンの五輪代表アコスタは、来るシーズン最大の注目株に挙げてもいい。リーガへの順応には時間がかかるかもしれないが、メッシ、アグエロに続く“アルゼンチン産スター”になる可能性を秘めた若者だ。

 ビジャレアルはただ巧いだけでなく即戦力として計算できる2人、マヨルカのMFイバガサとバジャドリーのFWヨレンテを引っ張ってきたところがさすが。アメリカ人FWアルティドールもアコスタ同様、時間を要するかもしれないが、活躍が期待できる。ビジャレアル攻撃陣の層の厚さは、これでリーガ最高クラスとなった。相対的にディフェンス、特にセンターバックが弱いような気はするが、ペジェグリーニ監督がこれで良いとしているのなら、良いのだろう。前バルサのMFエジミウソンをディフェンスラインで使うつもりなのかもしれない。

 ヘタフェは“レンタル”を利用し、お金をかけずチームを強化することに長けているが、1部リーグ5年目となる今年は違う。レアル・マドリーで無視され続けたFWソルダードや、南米リベルタドーレス杯の最優秀選手MFゲローン、ドイツU-21代表歴のあるMFポランスキ、トルコの有望なDFカシュなどを続々と買い取った。しかし目の付け所は相変わらずで、補強のバランスも良し。ビクトル・ムニョス新監督への御膳立ては済んだといえる。

 これら3チームに続くのはバルセロナとアトレティコ・マドリーで、評価は「良」だ。

 バルサはおよそ150億円をかけて、計画どおり次々と6人を獲得した。そこまではいいのだが、引っ掛かるのは、そのうちドイツのバイヤー・レバークーゼンに即レンタルしたCBエンリケを含む4人がディフェンダーで、1人が守備力に秀でたMFケイタという点。まるで「昨季ダメだったのはディフェンスのせい」とでも言いたそうな……。一番の期待はずれはフォワードだったはず……。

 実際、グアルディオラ監督は、アンリやボジャンとはタイプの異なる9番と、左アウトサイドの選手を欲している。だがエトーの引き取り手が見つからないこともあって、特に9番獲得オペレーションは難航。クラブはいまだ誰も押さえられない。交渉下手が改めて露呈したといってもいい。

 他方、アトレティコは全ラインを万遍なく、巧みに強化した。しっかり計画立てて、すみやかに交渉し契約までこぎつけたところも評価できる。セビリアも狙っていたチェコ代表DFウイファルシをかっさらったのは驚いたし、オランダ代表CBハイティンハやFWシナマ・ポンゴールも良い補強だ。あとは1.5列目からパスを出せる選手を捕まえるだけ。

 最後に、レアル・マドリーとバレンシアは「不可」である。

 前者は昨シーズン前半の時点で戦力不足を感じさせていたのに、レンタル帰りのMFハビ・ガルシアとMFデ・ラ・レッを除くと、獲得したのはCBガライとMFファン・デル・ファールトのみ。しかも、実力は確かな2人だけれど、補強として考えると、ちょっと的外れなのだ。公の場では「中盤から前の選手が欲しい」としか口にしていないシュスター監督だが、彼のスタイルからいって、今のチームに必要なのはファン・ニステルローイの控えたる9番と、2列目からスピードを活かしてサイドを崩していける選手だろう。

 今年のレアル・マドリーはクリスティアーノ・ロナウドへの執着で失敗した。話が進展しないなら、タイムリミットを設けるか、他方面にも手を伸ばし始めるべきだった。世界的スター1人の獲得に拘ったペレス会長時代の失敗を、よもや忘れたわけではあるまい。

 バレンシアは実質補強ゼロなので、本当は評価外。スポーツディレクターの交替があった上、12月までに債務の一部(200億円強)を返済しなきゃならないというから、買い物どころではないのだろう。

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