MLB Column from WestBACK NUMBER

ブレーブス、魅惑の不完璧性。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2005/10/13 00:00

ブレーブス、魅惑の不完璧性。<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 日本のメディアでもメジャー関連のニュースで連日賑わいをみせているように、いうまでもなくただいまメジャーはプレーオフ真っ盛りだ。出場8チーム中4チームに日本人選手が在籍していることもあり、日本での盛り上がりはより一層だろう。一時的でもメジャーに籍を置いた選手も含め、今季の日本人メジャー選手は計14人。そして彼らがシーズン終了時に在籍していたチーム(野茂、木田、多田野各投手は除く)が同じく8。その半数がプレーオフに進出しているのだから立派なものだ。メジャーにおける日本人選手の質の高さを示すものだろう。

 ところで、先日までディビジョン・シリーズで唯一日本人選手が絡んでいないブレーブス対アストロズの取材を仰せつかっていた。日本人選手なしとはいえ、プレーオフ新記録となった延長18回、5時間49分に及ぶ死闘を演じた第4戦、さらにクレメンス対スモルツのベテラン対決が実現した第2戦とかなりの見応えがあり、個人的に十分に堪能させてもらった。上記の2投手の他にも、ビジオ、チッパー・ジョーンズ、バグウェルなど、野茂投手のメジャー1年目だった1995年当時から、取材したことがある選手が何人か顔を揃えていることで、親近感が増しているのは確かだ。特にビジオ、バグウェル、スモルツの3選手は、11年のメジャー取材経験の中でもトップ10には入るだろうメディアの応対が非常に親切だった面々。取材にも力が入ろうというものだ。

 余談はさておき、すっかりプレーオフの常連チームになっているブレーブスだが、今季のナ・リーグ東地区優勝で、実に14連覇(選手会のストライキのためシーズン途中で打ち切られた1994年は除く)を達成した。もちろんメジャーでは前人未踏の記録のみならず、NFL、NBA、NHLと米国の4大プロスポーツを含めても、これだけ連覇を続けたチームはいまだかつて存在したことがない。

 何よりもこの記録は、1990年に就任以来チームを統括しているシューホルツGMの手腕に他ならない。すでにメジャー30球団の現職GMの中で、在任期間が最も長い長期政権を築き上げている。

 「ジョン(スモルツ)を先発に戻し、さらにティム(ハドソン)と長期契約を結んだことで、ここ数年は2人で、そしてその後は成熟したティムを中心に安定した先発陣を築ける態勢を整えることができた」

 今年のキャンプ期間中、ハドソンと5年の契約延長に合意した記者会見の席での発言をみても明らかなように、シューホルツGMは常に将来を見据えた選手補強を行っている。もちろん他のGMたちも同様の考えを持って取り組んでいるのだろうが、彼ほど適材適所でチームに見合った選手を獲得しているフロントは限られてくる。

 補強もさることながら、ブレーブスの黄金時代を支えてきたのはその人材育成の妙にあるといっていい。例えば、今回のディビジョン・シリーズ第3戦をみると、ブレーブスの先発に名を連ねた9選手すべてが生え抜きの選手。実に登録ロースター25選手中移籍組はわずか9人しかいないのだ。ヤンキースなどは逆に 25選手中7人しか生え抜きがいないことでもわかるように、トレードやFA移籍が日常化している今日では、驚異的な数字と言えるかもしれない。しかも生え抜き10選手が今回のプレーオフが初出場と、ここ数年で確実にファーム施設において若手選手を育成したかがわかるだろう。これらを担当するスカウトやファームのコーチ陣の採用も、もちろんシューホルツGMが仕切っている。

 実は、8月以降は野茂投手の取材で3Aインターナショナル・リーグの試合を見る機会が多かったのだが、ブレーブス傘下のリッチモンドがダントツの地区最下位に低迷していた。そんな惨状を見て、(将来的にブレーブスはヤバイかもなぁ…)と勝手な思い違いをしていたのが恥ずかしい。

 これだけの有望若手選手を揃え、シューホルツGMの手腕が今後も発揮されることを考えれば、どこまで連覇記録が伸びるのか末恐ろしい気もする。とはいえ、今年を含め4年連続でディビジョン・シリーズに敗退。この連覇期間でリーグ優勝は5回で、ワールドシリーズ制覇はわずか1回と、肝心のプレーオフではもう1つ強さを発揮できていない。シューホルツGMにしても、ブレーブスにしても完璧というわけにはいかないものだ。自分にとっては、その辺もメジャーの魅力の1つではあるのだが……。

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