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ケタ外れのリーガ。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2008/07/25 00:00

ケタ外れのリーガ。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 シーズン中、給料の未払いにあった選手はスペインサッカー選手組合に駆け込む。

 今年は223件の訴えがあり、1部リーグの6クラブと2部リーグの16クラブが支払いを滞らせていたことがわかった。

 そこで問題。それら22クラブが昨シーズン選手に対して作った“債務”の合計はいかほどだろう。

 驚くなかれ、実に3846万5376ユーロ。日本円に換算して約65億1532万円にも上るのだ。

 給料の未払いは毎年あることだが、さすがにこれは異常である。昨年は1471万8535ユーロだったので、わずか1年で約2400万ユーロ(約41億円)も増えている。「リーガ・エスパニョーラはやることなすことスペクタクルだねえ」などと笑ってはいられない、由々しき事態だ。

 では、なぜこんなことになったのか。ひとつは不況のせいだろう。スペイン経済はここ数年右肩上がりを続けてきたが、不動産バブルの崩壊を受け、今かなり深刻な状況を迎えている。サッカー界だけ無傷でいられるはずがない。

 もうひとつは、もっと本質的な理由──クラブ経営の失敗だ。スポンサー離れ、無計画な練習場建設やスタジアム改築、必要以上に増えた雇用者の数など、理由は様々だが、金回りが悪くなり支出が増えれば、借金はかさんで首も回らなくなる。

 だから2部ではセルタ、レアル・ソシエダ、ラス・パルマス、マラガ、アラベス、スポルティングが早々に破産法の適用を求めた。昨シーズン終盤、ずっと“ただ働き”させられてきた選手が2度もストライキ(試合ボイコット)を計画したレバンテも然り。破産法に頼ることでクラブは未払いによる降格を免れ、給料支払いの延期と減額も認められるのだ。

 他方、1部はどうかというと、そこまで恥知らずなクラブはないが、首が回らないあたりは変わらない。マヨルカは身売りを選び、英国の投資グループを最大株主に迎えることになった。天文学的債務を抱えるバレンシアはビジネス界の大物をトップに迎え、クラブ再建を託そうとした――。

 だいたい、スペインに財政健全なクラブなど存在しないのだ。「もしかしたら」と言えるのは、ここ数年、選手売却で大きな利益を上げているセビリアや、身の丈にあった経営とチーム作りを続けてきたヘタフェぐらいだろう。選手1人の獲得に50億円を注ぎ込む羽振りの良いバルサにしたって、依然300億円近い負債を残しているし、収入が多いのは間違いないレアル・マドリーも、会計上のテクニックで赤字をごまかしているとかいないとか。

 とにかく、どのクラブも台所は火の車なのだ。それゆえ契約や補強の際、工夫をこらしている。たとえば複数年でやや多めの年俸を提示しながら、「2年目、チームが2部に降格したら減額」という条項を付けたり、出場試合数が少ない場合やはり減額したり。違約金が発生しない選手だけを獲得し、その分サラリーを上げる努力をしているクラブもある。

 しかし、どれほどの年俸を約束されようと、ちゃんと支払われなかったら意味がない。今後の移籍交渉は、「うちは給料これだけ出しますよ」ではなく、「支払期日を遵守します」が殺し文句になるかも。

 ところで、65億円の未払い問題については、クラブ側を代表してリーガと選手組合が解決策を探っているが、雲行きは怪しい。

 クラブ側は破産法の庇護下に入ることを欲しているけれど、選手側は当然反対。一方で、選手側が求める給料受け取りの保証を盛り込んだ協約締結には、リーガが興味を示さない。

 話し合いがこのまま平行線をたどり、7月31日の24時までに未払い分の支払いが一件もなかったら、組合は選手総会を開いてストライキを検討するという。決行予定日は8月31日、つまり来シーズンの開幕戦だ。

 ラウールやプジョルといった大御所が支持していることもあって、このストライキ案が可決される可能性は十分にある。すでに待ち遠しい開幕戦が延期されるのは、ちょっと辛いのだが。

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