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『3-4-1-2』の不在。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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posted2005/03/22 00:00

『3-4-1-2』の不在。<Number Web> photograph by AFLO

 バルセロナ、PSV、リヨン、そしてロッベンが出場した場合のチェルシーなど、4-3-3を採用するチームが目につく。オランダでは3-4-3とともに親しまれている布陣なので、オランダ人のライカールトが監督を務めるバルサ、ヒディンク監督のPSVは当然としても、リヨンやチェルシーまでそうだとなると、流行の兆しありかなと思いたくなる。

 懐かしさも湧く。4-3-3は半世紀前まで、日本でも当たり前のように存在したからだ。それが気が付けば4-4-2が主流になり、そして現在の3-5-2に至った。

 欧州では、イタリア、ドイツを中心に一時期3-5-2が勢力を拡大したこともあったが、最近は下火になり、現在は4-4-2が主流だ。

 一口に4-4-2といっても、種類は何通りもある。そこで4分割表記が登場することになる。3分割から4分割への過渡期にあたるのは、'98年チャンピオンズリーグ決勝の前後になる。例えば、ユベントスを下したレアル・マドリーの布陣は4-4-2として紹介されていた。実際は4-2-3-1だったにもかかわらず。しかし、それから2週間経過すると4-2-3-1の4列表記は、広く世間に認知されることになる。'98年W杯に出場したオランダ代表のヒディンク監督が、自ら採用する布陣を4-2-3-1と称したからだ。

 そういわれてみると、'94年W杯のブラジル代表も、ベンゲルに率いられた名古屋グランパスも4-2-3-1的な4-4-2の布陣だったことに気が付く。

 ヒディンクは言った。「4-2-3-1には4-4-2と4-3-3の中間的な意味合いがある」と。

 そしていま、欧州には4-2-3-1=「4-4-2+4-3-3」が、当たり前のように浸透している。4-4-2より、サイド攻撃を重視した布陣が

4-2-3-1だとすれば、4-3-3は、より以上にサイド攻撃を重視した攻撃的な布陣になる。

 4-3-3を4分割表記にすれば、4-2-3-1と4-1-4-1の2パターンに分かれる。前者は守備的MF2枚。後者は1枚。冒頭で4-3-3と紹介した前述の4チームは後者になる。4-1-4-1的な4-3-3と言い表せる。

 チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦、バルサ対チェルシー戦に、もしロッベンが出場していれば、4-3-3対4-3-3は実現していた。チェルシーは手堅いカウンターアタック戦法をとらず、正攻法でバルサに立ち向かっていったと思われる。そしたら結果はどう転んでいただろうか。バルサが打ち勝ったようなに思えてならない。チェルシーはロッベンという看板不在が、むしろ功を奏した。弱者の論理に則れたことが幸いした。

 レアル・マドリー対ユーヴェの'98年チャンピオンズリーグ決勝は、4-2-3-1対3-4-1-2の試合だった。その結果、前者が勝利を収めた。そして以降、似たような布陣のマッチングでは、必ずと言っていいほど4-2-3-1が試合を優勢に進めた。3-4-1-2が衰退し、4-2-3-1が数を増やす機運に拍車を掛けた。

 4-2-3-1以上にサイド攻撃を重視する4-1-4-1的な4-3-3が、さらに増えていけば、3-4-1-2の居場所はもっと失われる。今季のチャンピオンズリーグは、その傾向を示唆している。

 我々の身近で、3-4-1-2といえば、日本代表になる。次戦の相手はイラン。布陣は4-2-3-1だ。チャンピオンズリーグの歴史は、イラン有利を予想する。戦力が互角ならば、噛み合わせの良さでイランが優勢。4-3-3の台頭を欧州で確認した後だけに、いっそう不安になる。両サイドを攻められ、5バック状態になり、攻撃はロングボールが主体。しかし、バックラインとトップが離れすぎているので、必然FWへのサポートは薄い。シェフチェンコやエトーがいればそれでも何とかしてくれそうだが……。

 チャンピオンズリーグの8強の中に「3-4-1-2」は1つも存在しない。それはなぜか。日本でチャンピオンズリーグを最も見る必要がある人物は、ジーコ監督であると僕は確信する。

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