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【山本ジャパン、最後の挑戦】
悔やみきれないスタート。 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byWataru Abe/PHOTO KISHIMOTO

posted2004/08/13 00:00

【山本ジャパン、最後の挑戦】悔やみきれないスタート。<Number Web> photograph by Wataru Abe/PHOTO KISHIMOTO

 これがオリンピックという国際舞台のトリックなのだろうか。

 サッカー男子五輪代表チームは、8月13日、テッサロニキのカフタンゾグリオスタジアムで行われた初戦のパラグアイに3-4で破れ、白星スタートを切ることはできなかった。

キックオフ直前の国歌演奏の時点で、チームの何人かの表情が、明らかにいつもと違ってこわばっていた。その緊張がほどけない立ち上がり5分にミスをつかれて失点してしまった。

相手のロングボールにDF茂庭がFWトレスと競り合うが、ヘディングでゴール前へ落とされ、これを那須がクリアしきれず、そこにヒメネスに素早く入り込まれてゴールを奪われた。

パラグアイは想定していた4-4-2ではなく、3-4-3の攻撃的な布陣で、3トップが両サイドに大きく張り出してきた。日本は、先月の韓国との強化試合時のように3バックのまま対応しようとしたが、こちらの出来がよくない上に、相手が悪い。オーバーエイジで招集されたFWカルドソは、前線でしっかりとボールキープをしてしなやかにボールを裁くので、両サイドが思い切りよくプレーできる。特に先制点で気をよくしたヒメネスは、その後も那須のサイドや裏を突いてきた。

「相手の3トップは想定していなかったので、初めは戸惑った。そのまま失点してしまった」と右MF徳永は振り返った。

日本は3バックがドタバタとコミュニケーションが取れないまま、両サイドが押し込まれ、ディフェンシブハーフの今野や阿部も下がり気味になり、中盤で相手に自由にできるスペースを与えてしまった。

対応に余裕がなくなってしまった3バックに、徳永を下げて4バックにしてバックラインを安定させる、あるいは左MFの森崎が下がって那須をサポートするなどの手もあったと思うが、なまじ韓国戦で対応できたことが仇となったのか、「自分たちの形」をやり通そうとして、ベンチも動かなければ、選手が危険を察知して臨機応変に対応することもなかった。

 一度は小野のPKで追いつくが、その3分後の24分にFKから失点を許し、37分には那須のクリアミスを再びヒメネスにさらわれ、カルドソのゴールをお膳立てされてしまった。

「今日に限っては初戦のむずかしさが出た。僕自身を含めて、いつもはやらないようなミスが出た」とMF小野は話した。

 それでも、後半は交替が奏功して日本のゲームを取り戻した。那須に代えてMF松井を入れてトップ下におき、それに伴って小野をディフェンシブハーフに、阿部を3バックの右に下げ、茂庭を左に移した。この布陣で日本、本来のパスゲームを展開し、相手が攻めにでてこなくなったこともあるが、チャンスを何度となく生み出した。最終的に4-3まで迫ったことを考えると、ますます前半の不出来が悔やまれてならない。

山本監督は、「立ち上がり早々に失点し、ピッチコンディションにフィットしなかった」と、前半の不出来について説明した。

試合の2日前に試合会場で公式練習が予定されていたが、前日の大雨でピッチ状態が悪く、スパイクを履いて使えずに終わっていた。それが「大きく影響している」と山本監督は言ったが、その一方で、パラグアイは同条件ながらも対応できていた。「(そういうピッチでも)バランスを崩さないうまさが、彼らにはあった。そこは我々には少し足りない部分」(山本監督)とも。

那須は、「もう少し(ピッチの)すべり具合を警戒して、距離を置いて守ればよかった」と言い、「チームに迷惑をかけた分、次の試合で今まで以上のパフォーマンスをしないといけない」と反省を口にした。

山本監督のもとで2年間かけて作り上げてきたこのチームの過去最悪とおぼしき試合だったが、プラス材料は、ハーフタイムで切り替えて、あれだけのプレーができたことだろう。

MF今野は、「自分たちの力はこんなものじゃないと、僕は思っている」と言った。

中2日で迎える次のイタリア戦(15日、ヴォロス)までに、いかに気持ちを切り替え、プレーの修正を施すか。チームの、選手の、対応力が試される。

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