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バラックの抜けた穴が埋まらない。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byPICS UNITED/AFLO

posted2006/10/11 00:00

バラックの抜けた穴が埋まらない。<Number Web> photograph by PICS UNITED/AFLO

 バイエルン・ミュンヘンが停滞している。ブンデスリーガ第6節を終わって3勝1分2敗(得点7)の第4位。1位ベルリンと2位ニュルンベルクが4つも引き分けてモタついているため辛うじて上位に食い込んでいるものの、勝点2差に12チームがひしめき合うダンゴ状態だけに、次節で負けたら一気に順位を下げてしまう危険水域にある。昨季は開幕から6連勝だった。

 選手のパフォーマンスは一様に冴えない。期待のFWポドルスキーはレギュラーを取れず、いまだノーゴール。ハーグリーブスは憧れのマンチェスター・ユナイテッド移籍が頭から離れず、「心ここにあらず」。今春取材したハンブルガーSVの広報担当者は、この後、バイエルンに移籍することになったファン・ブイテンについて、「彼はリーグ随一のセンターDF。何があっても彼だけは移籍させない」と豪語していたものだが、開幕前のジョアン・ガンペール杯(0−4)を見てしまっては「な〜んだ、あの程度だったのか」と言うのが私の率直な感想である。

 選手同士の連携がうまくいってない。出すべき箇所にパスが渡らず、踏ん張る場面でリズムが作れないのだ。原因はハッキリしている。バラックが抜けたからである。ということは、代役のファン・ボメルでは力不足なのだろうか?

 統計を見ると、両者のバイエルンデビュー時の最初の2試合におけるゴール数、アシスト数、1対1の局面での勝率、パスの受け取り回数はほとんど同じ。ただし、ボールへのコンタクト数が7割も違っている(バラックは2試合で177回、ファン・ボメルは103回)。ファン・ボメルが少ないタッチ数でポンポンと叩くのに対し、バラックは確実にキープし、タメを作り、頃合いを見計らうようにパスを出していた。もちろん速攻が要求される場面では一気にフィードした。なによりもバラックは超攻撃的なMFだった。毎年平均15ゴールを奪うMFなど、この国のリーグには1人もいない。そんな第二のバラックを求められても、後継者は困るだけだ。

 「誰がバラックの代わりを務めるのか?」の問いに、バイエルン関係者は当初「サンタクルスになるかなぁ…」と弱々しく返事をしていた。これにダイスラー、ハーグリーブス、オットルを加えて新世代のチーム作りを模索したのだろうが、MFを“集団指導体制”にしたところで、強いバイエルンを築けるわけがない。またファン・ボメル1人に負担を押し付けるわけにもいかない。

 ルンメニゲ会長は「今季は3位以内で十分」と開幕前に明言した。あの強気の会長が優勝の2文字を外して、ここまで超控え目になるとは驚きである。なんだか、フロントからも現場からも元気が伝わってこない。これじゃ、いけません。会社が大幅黒字でも、商品(チーム)にクオリティと魅力がなければ消費者(ファン)はソッポを向くに決まっている。物笑いの種にならないうちに早急な改善が必要だぞ。

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