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早くも正念場を迎えたリバプールと
“知将”ベニテスの命運。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2009/10/20 11:30

早くも正念場を迎えたリバプールと“知将”ベニテスの命運。<Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

CLでもフィオレンティーナに敗れるなど、なかなか調子の出ないリバプール。監督のベニテスも2004年の就任以来最大の窮地に立たされている

「史上最短に終わったタイトルレース参戦」。

 今シーズンの開幕から2週間強でリバプールに用いられた表現である。わずか2敗で僅差の2位につけた昨シーズンを受けて、今季は20年ぶりのリーグ優勝への期待が高まっていた。しかし、いきなりトットナムとアストンビラに敗れ、優勝は早くも絶望的と判断されたのだ。この「リバプール絶望説」は、ライバルと目されるマンチェスターU、チェルシー、アーセナルの3チームにも早々に土が付いたことで、ひとまず“撤回”されたかに思われたが、10月4日のチェルシー戦で3敗目を喫し、結局また再燃することとなった。

 リバプールは、先のチェルシー戦までのCLとプレミアリーグを合わせた10試合中、明らかな格下以外との6試合では、毎試合2点以上を奪われて2勝4敗に終わっている。監督のラファエル・ベニテスは、「まだ先は長い。昨シーズンの引分け数(11)を勝利に変えれば、負け数の増加は帳消しにできる」と言うが、今後、難敵や強敵からの勝利を確信できる要素は見当たらない。

ウリエ前監督を思い出させる、チーム戦略の失敗。

 調子の悪さには複数の原因が考えられる。まずは、チェルシー戦で確認された昨シーズンからの「上積みのなさ」。トップ下のスティーブン・ジェラードを相手MF陣に消され、最前線でフェルナンド・トーレスが孤立する様子は、まるで敗北に終わった昨シーズンCL準々決勝でのチェルシー戦が再現されているかのようだった。

 両キーマンをサポートすべき脇役の不甲斐なさを目の当たりにして、ジェラール・ウリエ前監督時代(1998-2004)の苦い思い出が頭を過ぎったファンも多かったことだろう。ジェラードが、自伝本の中で「新戦力はいずれも力不足だった」と嘆いた前体制下のリバプールは、'01年には国内外カップ戦で三冠を獲ったものの、その後のレベルアップに失敗し、プレミアリーグでの優勝争いとは無縁のままに終わった。ベニテス率いる現チームも、'05年にはCL優勝を成し遂げておきながらリーグタイトルとは縁のないままだ。

攻撃センスに欠ける中盤と「ここ数年で最悪の最終ライン」。

 戦力は厳しい見方をすれば、上積みがないどころか昨シーズンからダウンしているとさえ言える。センターハーフのシャビ・アロンソが去り、代役となるべきアルベルト・アクイラーニが足首の怪我で出遅れたことから、リバプールは中盤の展開力が乏しいまま開幕を迎えた。中央に座るハビエル・マスチェラーノとルーカスの両名は揃って攻撃センスに欠ける。チェルシー戦で珍しくボールを持って30mを駆け上がったマスチェラーノが、あっさりと最終ラインにバックパスを送ったシーンはその象徴だ。結果的に前方のジェラードの負担が増し、チーム唯一のチャンスメイカーは、無理なキラーパスを狙ってはポゼッションを放棄することも多くなっている。

 守備面では、攻撃過多なグレン・ジョンソンが右SBに加わったことで、カウンターに対する脆さが目立つ。かつてフランスのマルセイユなどでFWとして活躍したトニー・カスカリーノのように、「ここ数年で最悪の最終ライン」とまで言ってはばからない識者までいる。

<次ページに続く>

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