ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2005年東アジア選手権VS韓国戦(2005年8月7日) 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2005/08/09 00:00

2005年東アジア選手権VS韓国戦(2005年8月7日)<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 東アジア選手権最終日の8月7日、日本は大邸(テグ)で韓国と対戦して、交替出場したDF中澤のゴールで1−0で勝ち、4カ国大会を1勝1分1敗で2位という成績で終了した。優勝は中国(1勝2分0敗)だった。

 4日に韓国―北朝鮮が引分けて優勝の可能性が消滅していた日本は、3日の中国戦とほぼ同じ若手中心のメンバーで臨んだ。違いは、GK楢崎に代えて出場機会がなかったGK土肥を、腰を痛めたFW田中達也の代わりにFW玉田を起用した点ぐらいだった。

 「公式戦で、ライバルとアウェーの雰囲気の中での闘いで、彼らがどれだけ気持ちを出せるか見たかった」と、ジーコ監督は起用を説明したが、彼らはその期待に応えるだけの積極的なプレーを90分間見せた。

 選手同士のコンビネーションという部分では、まだお互いの呼吸を計りきれずにギクシャクしたところもあり、せっかく中盤でボールを奪っても、巻と玉田の2トップの動き出しと、ボールが出るタイミングが合わずに、攻めかけて相手にボールが渡る場面も少なくなかった。

 3点差で勝てば中国に逆転優勝できる韓国は、中盤のペク・チフン、キム・ドゥヒョン、チョン・ギョンホらを中心に、MF阿部がボールを取りに行って空いたボランチのスペースや、3バックの周りのスペースを狙って攻め、前後半で18本というシュートで日本ゴールに迫った。だが、DF陣は最後まで相手に体を寄せ、コースを切って、何とか危機を凌いだ。中国戦で相手をマークしきれずに失点した経験が、生かされていたと言えるだろう。

 貴重な決勝点は途中出場した、従来の先発メンバーである“ベテラン”の中澤と小笠原のプレーから生まれたが、そのコーナーキックをもたらしたのは巻の粘り強いプレーだった。今回初招集のFWがこぼれ球を追いかけ、相手と競り合って得たセットプレーだった。

 ジーコ監督は、相手に負けないスピードや体のあたり、1対1でのプレー、自分の個性を出せるかという点をチェックしていたというが、「いい結果が出た」と彼らのプレーを評価し、特に初招集のMF今野、MF村井、巻、MF駒野、田中達也の5人については、「彼らのいいところが見られた」と評価した。

 今野も「球際では負ける気がしなかった。うまく耐えられた」と振り返り、「大会を通してやらなくてはいけないことも見つかったし、これからだと思う。勝手に周りの人をライバルだと思って、負けないようにがんばる」と手ごたえを口にした。

 日本にとっては収穫となった若手の起用だったが、欲を言えば初戦から試すことはできなかったか。

 ジーコ監督は、「初戦のプレッシャーを考慮して」従来のメンバーで臨んだと説明した。

 確かに、タイトル奪取もちらつく中で、初戦のプレッシャーが彼らにとって重荷になることは考えられる。

 しかし、従来のメンバーがW杯予選やコンフェデレーションズカップなどの連戦から蓄積された精神的疲労を抱えていることは、大会前からある程度予想されたことではなかったか。そこで、チームの半分を若手にすることも選択肢としてあり得ただろう。実際に韓国戦では中澤や小笠原が入って、チームが落ち着いたという効果もあった。

 監督は、チームを若手だけで編成した方が先輩への遠慮もなく、のびのびとプレー出来ると考えたとも話していたが、それ以前に、今大会をどう利用するのか、タイトルを獲るのか、若手を発掘するのかという優先順位が、どちらも求めたために明確ではなかったのかもしれない。

 いずれにせよ、ようやく得た新戦力チェックの機会に、若手が可能性を示し、今後チームの活性化が期待できるようになった。

 ジーコ監督も「W杯のチームに決まった者は誰もいない。新しい選手を取り入れないとチームのレベルアップにならない。競争が生まれて欲しい」と新たな展開を望むコメントをした。

 では、8月17日に控えるW杯アジア最終予選のイラン戦ではどう臨むのか。ジーコ監督は欧州組を呼ばずに今大会のメンバーで臨むことを明らかにしているが、先発については「これから考える」と言及を避けている。

 日本の予選突破は決まっているが、アウェーでの敗戦の借りを返してB組1位通過を狙うとなれば、今回のような若手のみの構成にはならないだろう。従来のメンバーに若手から誰が食い込むか…。楽しみである。

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