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欧州F1戦線に冷夏が襲う。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/07/26 00:00

欧州F1戦線に冷夏が襲う。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 暑い! と声にするのもいまいましいくらいに暑い。読者の皆様には暑中お見舞い申し上げたい。また先の集中豪雨では中越地方に甚大な被害が出たが、被害に遭われた方で当コラムの読者がいらっしゃったら、心よりお見舞い申し上げます。

 などと時候の挨拶から始めたのにはわけがある。日本は5、6月から観測史上稀に見る真夏日・熱帯夜を記録したと聞くが、F1の本場ヨーロッパは逆に夏が寒いのである。

 まだ夏本番は迎えてないものの、7月4日のフランス、7月11日のイギリスと決して暑くはなかったし、イギリスなどむしろ“涼しい”ほどで、同日のパリではなんと雹(ひょう)が降ったという。もう秋ですなぁ、などという気の早い輩もいたが、実はこの涼しさがF1戦線にも大きな影響を与えているのである。

 昨年のヨーロッパは稀にみる酷暑で、ヨーロッパGP(ニュルブルクリンク)、フランスGP、ドイツGP、ハンガリーGPと7〜8月はコースに陽炎が立ち、逃げ水が溜まる中でのレース。この4戦で特徴的だったのは、シューマッハーに勝ちがなく、ラルフ、モントーヤ、アロンソなどいずれもミシュラン・タイヤ・ユーザーが勝ったということである。そう、路面温度50度に達するような酷暑のコンディションではミシュランがブリヂストンをしのぐのである。

 レース用タイヤはレース中の“もち”に支障をきたさない限り、柔らかい(ソフトな)ゴムの方がいい。グリップが上がってタイムが良くなるからだ。ところがそれも両刃の剣で、ソフト・タイヤは暑い路面に弱い。すぐにタイヤ表面にブリスターと呼ぶ火ぶくれができてしまって、タイヤがグリップしないのだ。

 ところがミシュランのタイヤは実に不思議な性質を持っていて、ソフトなタイヤでも“熱垂レ”しない。なぜか? 金〜土曜日とマシンがコースを走り込むことによって、ライン上にベッタリとゴムのコーティングができる。ラバーコーティングと呼ばれるこのゴムの皮膜がブリスター発生を抑制するのだが、そのプラス・アルファ分をミシュランは見込んで、思い切ってソフトなタイヤを投入するのである。逆に言うと、雨が降ってラバーコーティングが流されたりするとお手上げで、柔らかいタイヤは粗い砥石に削られる消しゴムのようなことになってしまう。

 予選4位だったシューマッハー(ブリヂストン)が、ポールシッターのライコネン(ミシュラン)を抑え切って逆転優勝したイギリスなどは、路面温度が28度しかなかった。

 こうなると、12戦11勝のシューマッハーが敗れる日はヨーロッパに酷暑が戻る日ということになる。

 7月25日のドイツGPがその日になるかどうか? 昨年の同レースは、勝ったモントーヤが「故国コロンビアもこんなに暑い日はないよ」と言ったほどで、気温40度・路面温度50度だった。

 逆に涼しいコンディションになればシューマッハー有利。フェラーリのコンストラクターズ・タイトルが決まる可能性も出て来る。そうなればF1シーンに早々と秋風が吹くことになるだろう。

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