モナコの“魔物”をも封じ込めた
ブラウンGP。

西山平夫 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Hirao Nishiyama

photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

モナコの“魔物”をも封じ込めたブラウンGP。

 トップを快走しているマシンが突然止まったり、雨の混乱で超大穴候補が勝ったりすることで「魔物が棲む」と言われるF1きってのクラシックイベント、モナコGPも今年で迎えること67回目。

 果たしてどんなどんでん返しが待っているかと期待されたが、案に相違して、開幕戦から快進撃を続けるブラウンGPのジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロのワンツーフィニッシュで幕を閉じた。

再びの光景……バリチェロが後続を抑え、バトンが逃げ切る。

 対抗馬に挙げられた予選2位のキミ・ライコネンは、決勝で3位に後退。一発の速さではブラウンを上回るのでは……と多くの期待を背負った新鋭ベッテルは、1コーナーにクラッシュアウト! ブラウンGPの理詰めの強さが、モナコの魔物の跳梁をも封じた一戦だった。

 ブラウンの勝利の方程式はフォーメーションラップ開始直前、タイヤウォーマーが外された瞬間に明らかになった。ポールシッターのバトン、予選3位のバリチェロともグリップのいいスーパーソフト(SS)タイヤを装着して決勝に臨もうとしていたのだ。SSタイヤは路面への食いつきはいいもののグリップダウンも早く、長い周回数はもたない。今季初めて最前列に着けた予選2位のライコネン、予選5位のマッサらフェラーリチームは硬くて長持ちするソフトタイヤを履く。

 このブラウン勢のタイヤ選択は、スタート後すぐに正解であったことが判明する。

 タイヤの高いグリップがクルマの蹴り出しとその後の伸びの良さにつながり、バトンは楽々ポールポジションを保って1コーナーに進入し、バリチェロはライコネンをかわして2位にジャンプアップ。レースの大勢はここで決まったといってもいい。モナコは前車を抜くのがほぼ不可能なコース。ライコネンに対しバリチェロは忌まわしい“壁”として立ちはだかった。

ライコネン最速ラップの後、再びバリチェロの不可解な動きが。

 それでも序盤の数周は先頭のバトンと、3位ライコネンまでの差は数秒しかなかった。ピットストップの展開によってはライコネンの逆転もありうる戦況。ライコネンは6周目に最速ラップを叩き出し、ブラウン勢にプレッシャーをかける。

 ところが、10周を過ぎたあたりからライコネンの脚色が鈍る。直前を走るバリチェロがガクッとペースダウンし、首位バトンとの差がまたたく間に開いていった。これではならじと、フェラーリ陣営は予定より早くライコネンをピットに呼び込んだ。ピットアウト後ライコネンをバリチェロから離すことで前方にスペースを作り、自在な走りでブラウン勢を追おうと目論んだのだ。

► 【次のページ】  フェラーリのピット作戦に対し、ブラウンがとった策とは?

筆者プロフィール

西山平夫

1952年生まれ、新潟県出身。レース雑誌「AUTO SPORT」編集部を経て1984年にフリーランスに。現在F1全戦取材を主軸に「Racing On」「F1速報」「NAVI」等に寄稿。ひいきのドライバーはF・アロンソ。


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