日本代表、2010年への旅BACK NUMBER

JリーグMVP男が見せた闘志。
小笠原満男は日本代表をどう変える? 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2010/01/24 08:00

JリーグMVP男が見せた闘志。小笠原満男は日本代表をどう変える?<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

もっとも大きな転機となった海外移籍とその後のJ復帰。

 小笠原の変化を語るにあたってターニングポイントとなったのが、'07年の鹿島復帰である。

 昨年、3連覇を達成したときに鹿島の鈴木満強化部長はしみじみとこう話したものだ。

「イタリアのメッシーナでは試合に出られなかったりと、辛いことを含めていろいろな経験をしたことが今の小笠原にとってプラスになっている。イタリアに渡る前の小笠原とは明らかに違う。あそこまでチームのために、と言うタイプではなかった。それが今ではリーダーという自覚を持って、鹿島のメンタリティーというものを(内田)篤人ら若い選手にしっかりと伝えている。3連覇において小笠原の働きは大きい」

 ずっと独走状態だった'09年シーズンは夏場から失速して、チームワーストの5連敗を喫した。それでも小笠原は周囲を鼓舞する全力プレーで、「内容は悪くない、大丈夫だ」とチームメイトに下を向かせなかった。鹿島の偉大なリーダーだった秋田豊、本田泰人のようなこの強烈なキャプテンシーが発揮されなければ、3連覇などあり得なかった。

 小笠原は代表に選ばれた際、「自分を出すよりも、チームを考える」とコメントしている。たとえバックアップに回ったとしても、メンバーの一員としてチームを支える覚悟はできている、ということだろう。小笠原が背中を見てきた秋田は、'02年の日韓W杯でサブという立場ながらムードづくりなどでチームの結束に一役買った。小笠原はそのときの秋田と同じ、31歳でW杯を迎える。

2列目で使う? それとも鹿島に倣ってボランチもアリ?

 小笠原についてもう一つ注目されるのが、ポジションである。岡田監督は2列目での起用を明言している。

「ボランチよりも攻撃的ミッドフィルダーとして期待している。今の代表は、攻撃的ミッドフィルダーの層が薄い。本当に頼って使える選手と考えたときに、海外組を除けば意外に薄い。そういうところで小笠原の存在感を出してほしい」

 確かに4-2-2-2システムをとると、中村俊輔、中村憲剛、大久保嘉人、松井大輔、本田圭佑らが攻撃的MFの候補となるが、はっきりと固定されているのは中村俊輔ぐらい。まだまだ新戦力を検討していく余地はあるだろう。

 だが、'07年に鹿島に復帰してからの小笠原はボランチとして新境地を開いてきた。執拗に追いかけてボールを奪う守備力は、鹿島のリーグ最少失点にも貢献している。味方がボールを奪われたら、体を張って守備をするシーンを多く見ることができた。ボランチに必要な、ミスの少なさは顕著で、運動量、球際の強さは申し分ない。そのうえ、「守から攻」に移る際、つなぎ役となって長短の的確なパスで攻撃を組み立て、後方から決定的なパスも繰り出すこともできる。シュート力を含めた攻撃センスは今さら言うまでもない。

 代表には遠藤保仁、長谷部誠が不動のボランチとして君臨している。だが、小笠原もまた運動量、攻守の切り替えの速さなど岡田ジャパンのコンセプトに合うボランチだ。体の強さを武器としており、汗もかける。今の小笠原ならボランチのほうが適役かもしれない。

 果たして3年半前とは違う新しい小笠原が、岡田ジャパンをどうグレードアップさせるのか。JリーグMVP男の加入がチーム全体の底上げにつながることだけは、間違いない。

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