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F1上海GP顛末記 

text by

西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta

posted2004/10/06 00:00

F1上海GP顛末記<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta

 「あ〜ッ!」と言われて、ジロ〜ッと見られた。

  (この人達自分を勘違いしてるな)と思いながらテーブルに着いた。

 お酒を呑み過ぎた肝臓といいという「野生苦了茶」というのを注文した。

 佐藤琢磨が18位からスートして6位でフィニッシュした中国グランプリの翌日、上海市内の公園内のことである。

 初めて訪れた上海市の広大さには息を呑んだ。空港から上海郊外のホテルまで凄まじい渋滞に巻き込まれながら進んだのだが、摩天楼の途切れ間がない。

 上海国際サーキットに着いてまたぶったまげた。こんなものよく造ったなぁとあっけに取られつつプレスルームのあるタワーにたどりつくと、6基あるエレベーターで9階に上がれという。着いてみると窓の真下30メートルがスターティンググリッド。広げた自分の股の間をF1マシンが300km/hで疾駆して行く。これまで観たことも聞いたこともない景色である。

 サーキットのあるあたりは広大な水田地帯であったそうな。それを150億円かけて埋め立てた。ところが地盤が緩く沈んでしまう。そんなことで建設費用は2倍、3倍になったという。また、周辺の道路整備などのインフラも含めると1000億円以上かかったという話も聞いた。

 それだけにF1サーキットでは後発に属するセパン(マレーシア)、サクイール(バーレーン)を超える世界一の施設になったわけだが、今後上海が世界基準となったら旧いサーキットは形無し。現にルノーのF・ブリアトーレ代表は「今後もアジア、中近東、ロシアにこうした規模のサーキットが増えるだろう。ヨーロッパのサーキットが古臭くなってしまう」と、F1開催の重心の移動をコメントしていた。来年4月にリニューアル・オープンする富士スピードウェイは上記サーキットを設計したティルケの手になるもの。それだけに完成が楽しみだが、いっぽう日本のモータースポーツの求心地ともいうべき鈴鹿サーキットはなんらかの手を打たないと、施設面でいよいよ立ち遅れてしまう。

 さて、月曜日。上海グランプリ帰りのお客さんが多いせいか飛行機の席が取れなかったことをこれ幸いと、執筆の合間を縫って東京の浅草みたいな賑わいを見せる「豫園」(よえん)に行って来た。お目当ては六本木ヒルズにも支店があるという「南翔饅頭店」の小籠包。6個30元(≒450円)をハフハフ食べて店を出るとこれまたガイドブックで有名な「湖心亭」なる茶店がある。そこにはいったらいきなり冒頭の日本語が聞こえて来たのだった。

 数人の男女のグループだったが、帰り際に挨拶された。筆者を知っているという。聞けば、佐藤琢磨の応援ツアーの面々。中のお一人はBARのTシャツを着てらっしゃった。

 帰国後聞いたところでは、上海グランプリのツアーは2社が企画して、総計200人以上の人が参加したという。ほとんどが佐藤琢磨ファンだろう。人気の凄さを人数で実感。上海は日本から空路3時間ばかり。日本からいちばん近い海外F1レースとしての上海グランプリは、観てよし、食べてよし、飲んでよし、筆者お勧めのイベントとなった。名物上海蟹の旬にちょっと早いのが難点だけれど……。

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