イチロー メジャー戦記2001BACK NUMBER

臨戦。 

text by

奥田秀樹

奥田秀樹Hideki Okuda

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photograph byYoshihiro Koike

posted2001/04/06 00:00

臨戦。<Number Web> photograph by Yoshihiro Koike

 開幕3連戦、イチローは13打数4安打2三振、打率.308の成績だった。4月2日、開幕戦直後の記者会見では無邪気な笑顔を見せ「ゲームそのものの興奮がすごかった。盛り上がりは想像していた以上。この開幕日は一生忘れることができないと思います」と感激し目を潤ませていたが、3戦目の後ともなると既に淡々としたものだった。

 試合後のウエイトトレーニング中、TVで野茂のノーヒットノーランのシーンを見ていたそうだが、「現役メジャーリーガーで2回は野茂さんだけだそうですよ」と話を向けられても、「ああそうなんですか」と口数は少ない。「対戦が楽しみですね?」にも「それまでにこっちが下に落ちないように」という返事だ。

 メジャーデビューの儀式は終わった。いよいよプロフェッショナルとして、焦点を絞り本格的にメジャーに挑戦していこうという決意の現れなのだろう。4安打といっても、アスレチックスのエース、ティム・ハドソン、バリー・ジートーには6打席0安打2三振と完全に手玉に取られた。彼らを打っていかないことには道は開けない。

 4月12日、そのハドソンと再戦がある。

 「やられたらやり返す、そういう気構えがないと、打席には立てないでしょう」と既にリベンジ宣言もした。

 ハドソン対イチローは第1打席、外より、91マイル、92マイルのヘビーシンカーに詰まらされセカンドゴロ、第2打席はスライダーでボテボテの一塁ゴロ、そして第3打席はチェンジアップとスプリッターで翻弄され5球で空振り三振を喫した。

 「あれだけ低めで勝負できて、ボールが高めには浮いてこない投手は見たことがない。しかも変化球は独特の曲がり方をする。器用なんでしょうね。変化球の腕の振りがまっすぐに近くて、そこから7、8マイル落としてくる。ストレートと変化球を見分けるのは難しいですよ」と解説する。

 実はハドソンは、いちいち握りを変えるのではなく、親指、中指、人差し指と、それぞれの指の微妙なプレッシャーの掛け方の違いだけで球種を変えられるのである。その上、腕の振りがいいのだから見分けにくいはずだ。

 バットが空を切った時、イチローの目が虚空を向き、無念そうな表情になった。

 「試合中、手ごわいなと感じたこともありました。でもそういうこともメジャーで期待していたことの一つですし、苦しいけど、楽しむこともできました」とイチローは振り返る。その口調に無理をしている様子はない。挑戦するためにここに来たのだ。

 ハドソンは「イチローはボール球には簡単に手を出さないし、足が速いし、油断ならない。あまり当たりたくないタイプの打者だ。今日は私のレパートリーを全部見せてしまったから、次の対戦では彼がどうアジャストしてくるかだね。ヒットを4本打たれてしまうかも」と余裕を見せつつ話す。対決第2幕が楽しみである。

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