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高原とオシムは相思相愛になれるか。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byMichi Ishijima

posted2006/10/30 00:00

高原とオシムは相思相愛になれるか。<Number Web> photograph by Michi Ishijima

 フランクフルトに住んでいる日本人に会うと、たいていこんな質問をされる。

 「高原って、どこに住んでるんですか?」

 フランクフルトには約5000人の日本人が住んでいることもあって、高原直泰への注目が大きい。日本系のデパートでは高原のユニフォームが売られていて、お土産として大人気だそうだ。

 そうやって地元の日本人に騒がれることも、ドイツ生活4年目を迎えた高原には苦にならなくなってきたようである。

 「ここは日本食材店も充実していて便利。フランクフルトに引っ越してから、スポーツジムの会員になったんですよ。週に1、2回プールで体を動かして、ジャグジーに入ってくつろいでいます」

 ジュビロ磐田時代、高原にとってプール通いは、コンディションを整えるのには欠かせないメニューだった。水圧が血行を促進して、老廃物の除去を助けるからである。ハンブルク時代にはいいプールがなく、この習慣を続けることができなかったが、幸いフランクフルトには施設が整ったプールがあった。フランクフルトで9月にデビューして、ドイツ杯とブンデスリーガで立て続けにゴールできたのも、生活面が安定したことが大きい。

 チームにおける高原の評価は高い。その一番の理由は、ゴールだけでなく、ゲームメイクにも絡めるからである。

 フランクフルトは1部残留を最大の目標に掲げる“守備のチーム”だ。中盤に気の利いたパスを出せる選手はいなく、どうしてもサイドからの単調な攻撃になってしまう。

 そういう中にあって、高原だけは“意外性”のあるプレーができる。ワンツーを試みたり、ボールをトラップすると見せかけて反転したり。高原がいるといないとでは、攻撃のリズムは全く違うものになってしまう。

 「別にオレもトリッキーなプレイヤーではないですけどね(笑)。ただ、攻撃のときにアクセントをつけられると思うし、まわりとのコンビネーションで相手を騙すプレーが得意。フランクフルトでは、それが有効的にできていると思う」

 もちろん高原は、今までどおりピッチを走り回って守備をしている。ハンブルク時代は「タカはアスリートになるつもりか」と陰口を叩かれたが、逆に言えばそれだけ走力を評価されているということでもある。

 オシム監督はフランクフルトの試合をチェックしているそうだが、試合を見ればいかに高原が走るサッカーと、考えるサッカーを両立しているかがわかるだろう。

 高原は「フィジカル面で勝てない部分を、アイデアで補えばいい。サッカーはフィジカルだけじゃないんでね」と力強く語る。まるでオシム語録のようだ。高原とジーコのイメージが合うことはなかったが、オシムとは相思相愛になれる可能性がある。

 イタリア語を話せる中田英寿は、ジーコと特別な関係を築いた。だが、それがときにチームメイトの嫉妬を招き、中田本人もそういう雰囲気をプラスに転じることはできなかった。周知のとおり、オーストリアで監督をしていたオシムはドイツ語を流暢に操ることができる。では、ドイツ語を話せる高原がオシムのチームに入ったとき、どんな役割を担えるのか。27歳になった黄金世代のエースストライカーの真価が問われることになる。

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