Column from Holland & BelgiumBACK NUMBER

アンデルレヒトが願う奇跡。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byAFLO

posted2004/10/04 00:00

アンデルレヒトが願う奇跡。<Number Web> photograph by AFLO

 センターバックが18歳で、右サイドバックが16歳―――これは決してユースチームの話ではない。ベルギーの名門、アンデルレヒトのディフェンス・ラインの年齢なのだ。

 センターバックのコンパニー(18歳)は、昨季からレギュラーに定着し、すでにベルギー代表の中心にもなった。この褐色の肌を持つ長身DFは、マンチェスターUやアヤックスが獲得を狙う逸材だ。

 右サイドバックのファンデン・ボーレ(16歳)は、ベルギー人の父とコンゴ人の母を持つ。身体能力とテクニックに優れ、今年の4月にはベルギー代表デビューを果たし、ベルギー代表の最年少出場記録を更新した。そして、今季はチャンピオンズリーグでもバレンシアやインテルを相手に堂々と渡り合っているのである。

 この2人には共通点がある。それは「アンデルレヒトのユース出身」ということだ。コンパニーは6歳のときから、ファンデン・ボーレは8歳のときからユースに在籍している。ついでに言うなら、昨季1軍デビューを果たしたFWのレギアー(17歳)は、5歳のときにユースに入っている。

 今、アンデルレヒトのユースは、恐ろしいほどにタレントを生み出しているのだ。

 それには秘密がある。アンデルレヒトは、隣国のフランスやオランダの育成システムをじっくりと研究し、ヨーロッパ一のユース施設を作ろうとしているからだ。チーム・マネージャーのファン・ホルスビークは言う。

 「私たちは12.5ミリオンユーロ(約18億円)をかけて、ユース施設を建設中だ。インフラだけでなく、システムも改革して、自前の選手を育て上げたい。ベルギーは自分たちの人材だけで戦えるはずだ。ヨーロッパ一の施設を作って、奇跡を起こしたいんだ」

 ブリュッセル郊外のアンデルレヒト地区に「とても公表できる額ではない」(ファン・ホルスビーク)というほどの値段で土地を購入し、人口芝2面を含む10面のピッチを持つ施設を着工中だ。ユース施設の模範となるものが出来ることは間違いないだろう。

 このプロジェクトの魅力に吸いつけられるように、人材も集まり始めている。U19ベルギー代表FWのラマー(16歳)も、今季からアンデルレヒトにやってきた。チームの野望は、確実に実現されつつある。

 だが、夢は大きいだけに、リスクも伴っている。マネージャーのファン・ホルスビークは、こう説明する。

 「これ以上ないという施設を作っているだけに、莫大な金がかかる。だから、今後チャンピオンズリーグには、絶対に出場し続けなければいけない」

 誰もが育成には興味を持っている。でも、皆がそれをしないのは、資金を育成ばかりに注いでしまうと、即戦力の選手を獲得するお金がなくなり、トップチームのレベルが落ちてしまうからだ。

 アンデルレヒトの賭けは、滅亡と繁栄のどちらをもたらすのか。ファン・ホルスビークの言うように「奇跡」が起こることを期待したい。

ページトップ