総合格闘技への誘いBACK NUMBER

運命の7月21日 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

PROFILE

photograph bySusumu Nagao

posted2008/07/15 00:00

運命の7月21日<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 DREAMが早くも正念場を迎えようとしている。

 3月15日に旗揚げされ、きたる7月21日に第5回目を数えるDREAMだが、次の大会は、このイベントにとって大きな意味を持つ大会になりそうだ。

 まず興行の目玉として行われるライト級グランプリ決勝戦だが、DREAMとして初のチャンピオンが生まれるにふさわしい4人の選手が揃ったといっていいだろう。

 ようやく一般の人に認知されるようになった世界最高峰の寝業師である青木真也に、クラッシャーの異名を持つ川尻達也、HERO’S勢として唯一残ったベテランの宇野薫、そして最後はPRIDE出身でもHERO’S出身でもない、まさにメイド・イン・DREAMといえるエディ・アルバレスといった先鋭たちである。

 その実力はもちろん、各人独特のサイドストーリーを持っているだけに、単純に戦いを楽しむだけではなく、ある意味、日本人好みの“裏を読み解く”といった観戦もできる対戦模様になりそうだ。

 例えば青木は、HERO’SのチャンピオンだったJ.Z.カルバンとのトラブルや再戦を超えてようやく届いた悲願の舞台であり、宇野ならば、ひとりHERO’Sの看板を背負い戦い、川尻は、盟友の石田光洋の下した宇野との再戦が注目され、アルバレスは、そんな日本人たちのしがらみとは関係ない快活なファイトを見せてくれる清涼剤のような選手であったり……。なかなかにバランスの良い見事なキャスティングであり、白熱するであろう試合はもちろん、映像作家の佐藤大輔氏による“煽りVTR”も楽しみである。

 初のチャンピオンの誕生となるDREAMだが、王者という絶対的な存在が生まれて初めて、その団体ないしイベントは体を為す、というもの。果たして、象徴となり看板となる選手は誰なのか、DREAMにとって重要な日ということは間違いないだろう。

 また今大会の重要性を説く意味でも、DREAM初登場となる二人の選手の存在を忘れてはいけない。

 山本“KID”郁徳と秋山勲成。

 まさに満を持しての参戦というべき二人だが、日本格闘技界きっての役者と呼べるこの二人がこれまで以上にDREAMを一般の人に注視させるべき存在になるのは間違いない。

 KIDは、彼のために新設されたフェザー級でジョセフ・ベナビデスと対戦。パフォーマンスも含め、圧倒的な試合を見せることができるか注目だ。

 秋山は、例の桜庭和志戦以降、大ブーイングの対象となっているわけだが、そのふてぶてしくも強心臓なキャラクターと圧倒的な存在感は類稀であり、現在の格闘技界では唯一無二の選手だと言っていいだろう。相手は、自ら志願したプロレスラーの柴田勝頼。秋山にかぎっては、選手に対戦オファーを出すと嫌がられなかなか相手が決まらない状況下での柴田戦となる。柴田の捨て身のファイトが、秋山の強さにどこまで食らいつけるか刮目したい。

 そして、イベントとしてのDREAMにとって最大の勝負所といえば、今大会は3月の『DREAM.1』以来となる、当日地上波放送だということだ。『DREAM.2』〜『DREAM.4』のように数日置いてのオンエアとはちがい、関心と反応のすぐ出る当日放送は、人気を測る上で重要なバロメーター。今後のDREAMの行く末を占う意味でも、どの程度の視聴率が獲得できるか興味の沸くところだ。

 ミルコ・クロコップや桜庭、ミノワマンといった人気者がこぞって出場するオールスター戦とはいかなかったが、クオリティ高きハードとソフトが揃った、今のDREAMが提供できる最高にターニングポイントとなる大会。その奮闘やいかに?

青木真也
川尻達也
宇野薫
エディ・アルバレス

格闘技の前後の記事

ページトップ