2004年に西武の松井稼頭央内野手がフリーエージェントでニューヨーク・メッツに移籍した直後、ゴロの捕球を巡ってこんな指摘を受けたことがあった。
「カズオは捕球の基礎ができていない」
ご承知のとおり松井は高校野球の名門・PL学園高出身で、送球に少し難はあったが、日本では守備範囲の広さや肩の強さなど当時の遊撃手としては指折りの存在だった。
だが、メッツの関係者からは「カズオは捕球するときに他の野手からボールが見えなくなる。それは次の失策の元になる」という指摘だった。
日本球界屈指の名手の守備が批判された理由とは。
理由は簡単だった。
日本ではゴロの処理を一連の流れで素早く行なうために、体の右寄りで捕球して、ボールを捕る動きの流れの中で送球動作に入る。そのために右肩を引いて捕球するため、左サイドにいる二塁手や一塁手からは一瞬、ボールが死角に入ってしまうのだ。
メジャーでは常に「他の野手に見せながら体の正面で捕れ」とプロの世界に入った途端に、徹底的に教えこまれる。ルーキー・リーグ、1A(中南米の選手の場合はメジャーの各球団が運営する野球学校も含めて)には、それぞれのチームの選手育成用の指導マニュアルがあり、コーチが入れ替わってもまったく同じ方法で同じ基本を教育できるシステムが確立されている。だから普段はチャランポランのプレーをする中南米出身の選手でも、ゴロへの入り方は徹底して正面なのである。
メジャー流の育成・指導術を学んだ岡崎二軍監督。
「あの経験がどこにどう生きているかはまだ分からないよ」
巨人で今季から2軍を指揮する岡崎郁監督の言葉だった。
岡崎監督は2005年、巨人が提携関係にあるニューヨーク・ヤンキースの1Aと3Aにコーチ留学をした。
「こういう世界があるということを知れたことが大きかった。個々の様々な指導方法や選手の育成の仕方、またチームとしてのファームという組織への考え方を実際に見て、学べたのはもちろん意義があったけど、まだ僕の場合は途上ですから。良かったのか悪かったのかは分からない」
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筆者プロフィール
鷲田康
1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、Numberほか雑誌・新聞で活躍。著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、『ホームラン術』(文春新書)がある。

































