MLB Column from WestBACK NUMBER

カージナルスを支えたサラブレッド捕手 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGettyimages/AFLO

posted2005/09/27 00:00

カージナルスを支えたサラブレッド捕手<Number Web> photograph by Gettyimages/AFLO

 9月15日、カージナルスが両リーグを通じて真っ先に地区優勝を決めた。昨年に続き、まったく他チームを寄せ付けない強さをみせての独走だった。今季もナ・リーグ制覇の最右翼に挙げる評論家も多い。以前にも紹介した通り、今季の地区優勝は田口選手にとって昨年以上の充実感があるはずだ。これまでの活躍を改めて繰り返すまでもなく、次々に故障者が続く外野陣の穴を埋め続けた田口選手の果たした役割は十二分に大きかった。

 もちろん野球はチームスポーツであるため、選手1人の活躍だけで勝ち抜けるものではなく、ラルーサ監督の下に整備された充実した戦力があったからこそだと思う。だが、今回は敢えて、田口選手同様にカージナルスの優勝を陰ながら支えたもう1人の男を紹介したい。今季から正捕手になったヤディア・モリーナ選手だ。

 昨年までモリーナのメジャー歴は昨年マイク・マシーニーの控えとして51試合に出場したのみ。そのマシーニーがFAでジャイアンツに移籍したため、首脳陣は今年7月に23歳になったモリーナを正捕手に決めたのだ。

 「マシーニーがいなくなりましたからね。どうなるんですかね……」

 シーズン前半戦を戦っている時期、田口選手がこんな心配をしていた。田口選手曰く、マシーニーは単なる捕手だけでなく、ロッカールームでチームを盛り立てるリーダー的存在だったらしい。捕手というポジションだけでも人一倍気苦労が絶えないのに、そんな選手の後継者となるのはどれ程の重圧がかかっていたのか計り知れない。

 やはり前半戦の出来事だが、試合が終わった途端ユニフォーム姿のままでビデオの前に陣取り、盗塁を刺した自分のスローイング場面を繰り返しチェックしながらタイミングを確認していたモリーナを目撃したことがあった。いつも陽気さが目立つラテン系選手の中で、そのモリーナの生真面目な姿勢が今も印象に残っている。

 ラルーサも一度正捕手に指名したモリーナを起用し続けた。それは彼の監督としての信念でもあった。

 「モリーナを休ませる?捕手は他の野手とは違い、投手との関係もある。むしろ彼はこのまま使い続けたい」

 その言葉通り、故障者リストに入った時期を除き、ほぼ毎日モリーナにマスクを被せた。それに期待に応えるように、今季サイヤング賞確実なカーペンターを筆頭に、先発全5投手がすべて二桁勝利を挙げているメジャー屈指の投手陣を見事にリードしたのは特筆すべきことだと思う。

 実は、モリーナは生粋の捕手のサラブレッドだ。以前に田口選手が自身の公式サイトで更新している日記で紹介したエピソードなのだが、モリーナのプエルトリコの実家には球場が隣接している。その球場にあるフェンス前で撮影された母親の写真が、母の日に合わせて米国のスポーツ誌に掲載されたのだ。私自身も田口選手を通じてその写真をみせてもらい、後日本人に直撃してみた。

 「お母さんの写真を見た?最高の美人だろ。球場?ああそうだよ。普通の球場と同じくらいの広さかな。シーズンオフは兄さんたちと練習しているよ」

 モリーナがいう“兄さんたち”というのは、エンジェルスで活躍するベンジー、ホゼのモリーナ兄弟のこと。つまりヤディアはモリーナ三兄弟の末弟なのだ。次兄ホゼより7歳下のヤディア。当然のごとく捕手をしている兄の姿を見て育ってきただけに、迷わず捕手の道を進んでいったようだ。自分の浅はかな知識では、兄弟3人がメジャーですべて捕手をしているというのは初めてのことではないだろうか。

 期待通りのモリーナの台頭は、カージナルスにとって大きな収穫だったはずだ。育成が難しい捕手に関してしばらく悩まずにすむのだけでなく、さらに今後成長する可能性を秘めているのだから、これほど嬉しいことはないだろう。

 地元ブッシュ・スタジアムでは、ロッカールームが田口選手の隣ということもあり、今季はモリーナと世間話をする機会がしばしばあった。そこで気づいたのが彼の“ジョーダン・マニア”だ。普段着はいつも上から下までジョーダン・ブランド一色。それもナイキ契約選手ということもあり、常に最新グッズでキメている。少ない予算で細々とジョーダン・ブランドを買い揃える筆者にとっては、とんでもないライバル出現だった。

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