MLB Column from USABACK NUMBER

MLB契約付帯条項の奇想天外 

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李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2006/03/08 00:00

MLB契約付帯条項の奇想天外<Number Web> photograph by AFLO

 MLBの契約には、年俸についての取り決め以外に、さまざまな付帯条項がつくのが普通である。付帯条項には、大別すると、「出来高」条項と「特別扱い」条項の2種類があるが、たとえば、今オフ、マリナーズ入りした城島の場合、基本給は期間3年・総額1650万ドルだが、打席数などに応じた出来高で250万ドルが上積みされる内容となっている。一方、「特別扱い」条項には、城島及び城島夫人の通訳・英語レッスン、そして、日米往復12回の航空券の費用を、マリナーズが支払う内容が含まれているという。

 スター選手の契約に派手な特別扱い条項が含まれるようになったのは、FA制度が始まるようになってからのことであるが、これに対し、出来高条項の歴史は古い。たとえば、1917年にエディ・シーコットがホワイトソックスと結んだ契約に含まれていた出来高条項は、ブラックソックス事件を引き起こしたことで知られている。件の条項、「30勝したら1万ドルのボーナス」というものだったが、オーナーは渋ちんで有名なチャールズ・コミスキー、「ボーナスを払わされてたまるか」とばかりに、シーズン終盤、監督に「登板させるな」と指示したのだった。結局、シーコットは28勝止まり、このときの恨みが大きかったことが、19年のワールドシリーズで八百長に加担する主因となった。ブラックソックス事件では大量8人の選手が八百長に関わったが、チームメートから慕われる存在だったシーコットが八百長に加わる決意をしたことが、他の選手の加担を促したと言われている。

 一方、最近は、特別扱い条項が、年々「派手」になる傾向があるが、「派手化」のきっかけとなったのが、99年のシーズン前に、ケビン・ブラウンがドジャースと結んだ7年契約に含まれた、「貸し切りジェット機条項」だった。「毎年12回、家族がジョージア州の自宅からロサンジェルスまで往復する際の貸し切りジェットの費用を球団が負担する」という内容だったが、04年のシーズン前にブラウンがヤンキースにトレードされた際、この特別扱い条項をどう金額に換算するかで揉め、トレード交渉そのものが難航するというおまけまでついた。

 ところで、ブラウンのエージェントは、MLB一の辣腕エージェントとして有名なスコット・ボラスだったが、ボラスは、00年のシーズン終了後、FAとなったA−ロッドの契約交渉に際し、移籍先最有力候補だったメッツに対し、ブラウンよりもはるかに派手な特別扱いを要求して、世間を呆れさせた。交渉決裂後、A−ロッド獲得を断念したことをファンに納得させるために、メッツが交渉経過を暴露したのだが、「ニューヨーク地区での広告スペースがヤンキースのジーターを上回ること、シェイ・スタジアムにA−ロッド専属のマーケティング・チームの部屋を作ること、キャンプでA−ロッド・グッズ販売用テントを設置すること」などが、ボラスが要求した特別扱いに含まれていたという。もし、この時、ボラスが過剰な特別扱いを要求せず、A−ロッドがすんなりメッツ入りしていたら、その後、松井稼頭央がメッツ入りすることも、メッツで苦労することもなかったはずだと思うと、皮肉な巡り合わせである。

 ブラウンやA−ロッドの例でも明らかなように、メジャーでは、選手契約に「奇想天外」な付帯条項が付されることは珍しくない。「奇想天外」な付帯条項の中でも、極めつけと言っていいのが、今オフ、カージナルスと契約したFA選手4人の契約に含まれていた出来高条項だろう。「プレーオフの地区決定戦でMVPになったらボーナス」という、一見、ごくありきたりの内容であるが、地区決定戦にはMVPの賞そのものが存在しないことを考えると、これはやはり、「奇想天外」な条項と言わざるを得ないだろう。

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