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うわべだけの星勘定に溺れるな!
W杯は「散り方」の品評会でもある。 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byGetty Images

posted2009/12/15 10:30

うわべだけの星勘定に溺れるな!W杯は「散り方」の品評会でもある。<Number Web> photograph by Getty Images

W杯南ア大会、日本はグループEに入り、オランダ、カメルーン、デンマークと同組となった

 ’98年フランス大会(アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカ)

 ’02年日韓大会(ベルギー、ロシア、チュニジア)

 ’06年ドイツ大会(ブラジル、クロアチア、オーストラリア)

 過去3大会に比べると、今回のグループ(オランダ、カメルーン、デンマーク)は、ずいぶん苦しいと言わざるをえない。今回はジャマイカも、チュニジアも、オーストラリアもいない。客観的に見て格上ばかり。何勝何敗かを予想する、いわゆる星勘定が無意味なことのように思える。日本に有利な要素を、平衡感覚なく無理やり引っ張り出し、「行ける」「大丈夫」、あるいは、可能性は「ある」とか、つけいる隙は「ある」とか、日本語の曖昧さに乗じて、煽れば煽るほど幸は遠のいていく気がする。

 3連敗の可能性十分あり。でも、僕にはそうした状況がつまらなく見えない。3連敗は困った話ではあるけれど、だからといってつまらないわけではない。落胆はするけれど、夢も希望もなく漆黒の闇に突き落とされるわけではない。その落胆にも、エンターテインメント性が十分に含まれることもあるからだ。「がっくり」もまた楽しからずや。負けても楽しめる試合はある。負けても良くやったと言いたくなる瞬間も確実にある。

グループリーグ突破以外許されない、と考えるとツマラナイ!

 なにせ今回は、相手が強い。グループリーグ突破以外は許されないと思って見ていると、まったくつまらないモノになる恐れがある。スポーツを論じるとき、勝ち負けは重要な要素になるが、それだけではないのがサッカーの良いところ。そうした面は、他のスポーツより圧倒的に勝っている。

 サッカーというスポーツそのものが面白いからだ。サッカーが世界で断トツの人気を誇っている理由だ。負けて悔しがる行為も楽しいものだ。

 地球上には、日本より弱い国がいっぱいある。しかし、サッカー人気はそれでも高い。香港、タイ、ベトナム、中国などなど、日本以上に人気が高い国は数知れずある。楽しいか楽しくないかの基準が勝ち負けだけなら、また、結果至上主義、勝利至上主義のものさしでしか測れなければ、サッカーは一部の限られた国でしか愛好されていないはずだ。地球の津々浦々まで、サッカー狂であふれていることはない。

3連敗してもファンが増えるような社会の構築が目標だ。

 目指すべきは、3連敗してもファンが増える社会の構築だ。

 そのためには「負けっぷり」が良くなくてはならない。負けても良くやったと言われる負け方を追求すべきである。

 日本の優勝予想オッズは、ウイリアムヒル社によれば250倍だ。99%あり得ないと踏んでいる。遅かれ早かれ、いつか必ず負ける。日本にとってW杯本大会は「敗戦の旅」だ。日本だけではない、それは優勝チーム以外の31チームすべてに言える。視聴者、観戦者は、勝者より敗者の姿を圧倒的に多く見せられるわけだ。好むと好まざるとにかかわらず、敗者の姿に目を凝らす。問われているのは、負け方。散っていく姿になる。

【次ページ】 何十億人のファンの記憶に残る、感動的な負け方とは?

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