レアル・マドリーの真実BACK NUMBER

ロナウドの重たそうな身体が語るもの。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

PROFILE

photograph byTomohiko Suzui

posted2004/05/17 00:00

ロナウドの重たそうな身体が語るもの。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 なぜ? なぜって、やっぱりカネに目が眩んだから。無冠で終わった今シーズンでレアル・マドリーが得たものは、莫大なカネだけだった。

 だが、開幕前に行ったアジア遠征のツケが最後に回ってきたことを選手もファンもわかっていながら、誰も口にはしない。ペレス会長の解雇を求める声は少数派でしかない。いや、ほとんど聞こえてこない。その時点でレアル・マドリーの感覚は狂っている。確かに、タイトルを獲得できなくても、ペレス会長は経営者としては十分な働きをしただろう。

 今シーズン儲けた資金で、来季の新戦力として名前が挙がっている選手たち、シャビ・アロンソ、ファン・ニステローイ、サムエル、トッティを購入することができる。けれども、マジョルカに見苦しい負け方をした夜、ペレス会長に呼び出されたバルダーノとケイロス、ラウールの3人は何も言えなかっただろう。うなだれて、頷いていただけの光景が目に浮かぶ。誰のおかげで、こんな事態を生んだのか、知っているくせに。ケイロスは今でも、「ペレスのプランは私のプランでもある」と、シーズン中によく話していたセリフを吐くに違いない。ペレスのハードルが高かっただけなのか。間違っていたのか。すべての責任をかぶるのは、ケイロスなのに。今となっては、負け犬の遠吠えになるけれど。

 バレンシアの優勝パレードを数週間早めたマジョルカ戦の敗戦は、それでも少しだけだが、復調の気配を漂わせた。エトーに奪われた先制点は、レアルが絶好調なときでも、あり得たものである。それはチェルシーのラニエリがアーセナルとのダービー後に語った言葉を思い出させる。「アーセナルには好調な時間帯と不調な時間帯がある」というものだ。今シーズン、レアルの悪い時間帯のひとつに立ち上がりの数十分が挙げられる。強者にありがちなことだが、試合の序盤戦でノンキにボールをキープしている隙にカウンターを食らうのだ。相手をナメてかかるのはレアルの悪い癖である。でも、そのくらいの方が、見る側としては楽しめた。なぜなら、そのときのレアルは負ける気がしなかったから。リーグ前半戦は、ロースタートを切ろうが、先制点を失おうが、力を出せばゴールを決められる余裕があった。

 マジョルカ戦の失点はエトーを褒め称えるべきで、いまさらパボンを責めるのは悲しいことだ。彼とカメルーン人との能力にはかなりの差があった。失点は覚悟しなくてはならない。3点奪われても、4点取るというクライフ的な考えの方がレアルにはピッタリくる。

 しかし、ケイロスは過ちを犯した。後半、フィーゴをラウールとロナウドのトップ下に配置して、ベッカムを右にポジションを動かした。ずるずると左サイドだけに11人が入り込んだレアルは、醜いとしか形容できなかった。それでも、ペナルティで1点差に追い詰めた。同点であれば、バレンシアの優勝は持ち越しになる。だが、その流れを断ち切ったのは、ポルティージョの投入だった。ぶくぶくに太ったロナウドではなく、ソラリを外したときには、ブーイングが起きた。ブラジル人が足を引っ張っていたのは、明らかだった。ファンもわかっていた。ケイロスには度胸がなかった。

 ゴール裏の過激サポーター、ウルトラ・スルは負けたのにもかかわらず、お祭り騒ぎを照明が落ちるまで続けていた。理解不可能な喜びようは何だったのか。ロナウドのどてどてとしたドリブルにゲラゲラと笑いこけるボールボーイはなんだったのか。どこか、ベルナベウの空気は濁っていた。

 最終的には調子を上げてきたFCバルセロナではあるが、序盤の不調時のカンプ・ノウは異様なムードだった。罵声とブーイング。会長、監督を非難する叫び声が鳴り響いていた。だからこそ、危機感を抱いたバルサはいつも緊張感があった。数年前にも、最悪な状況にあったバルサで、ビトール・バイアは何度もファンに泣かされた。例えば、自らのミスで負けそうになった試合を大逆転したとき、試合後の彼はデ・ラ・ペーニャの肩をかりなければ歩けないほどだった。90分間ブーイングを受け続けていればなおさらである。しかし、いまのバイアはFCポルトでチャンピオンズ・リーグ決勝に進出するGKにまで成長している。決して、あのとき流した涙を無駄にはしていない。

 練習後、ひとり頭を抱えていたのは、ジダンだった。なぜ、こんな状態になってしまったのか、と自問しているかのようだった。肩をかけて慰めるケイロスの声も聞こえないほど、落ち込んでいた。ジダンのツメの垢を煎じてロナウドに飲ませたかった。せめて、ロナウドが普通のコンディションを保っていてくれれば、こんな惨めな結末はなかった。得点王が安泰になったことで、彼は夜の生活をエンジョイしていたとしか思えない。遊びたければ、遊べばいい。しかし、ロマーリオのように昼と夜の2つの顔を使い分ける才能が、ロナウドには備わっていなかったようだ。重たそうな身体が、それを語っている。

ページトップ