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ブレーメンの憂鬱。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/08/27 00:00

ブレーメンの憂鬱。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 我々はバイエルン・ミュンヘンに人材を供給するジョーカーなのか──。自虐と恨み節が重なり、目下リーグでいちばん元気がないのはベルダー・ブレーメンである。

 96年のバスラー、01年のピサロ、05年のイスマエル、そして今季のクローゼ。ブレーメンは過去10年間で4人もの主力選手を、いずれもバイエルンに引き抜かれてしまった。移籍の効果は絶大で、バスラー、ピサロ、イスマエル入団後のバイエルンの順位はいずれも1位。05年は前年優勝のブレーメンを3位に追いやった。そして今季のクローゼである。面白いわけがない。

 ファンもクラブもクローゼの身勝手な行動に激怒している。なにしろこれまですべてのインタビューで「移籍するんだったら外国のクラブしかないよ」と公言していたのが突然の変心。しかも4月のUEFAカップ準決勝(対エスパニョール)の2日前、アウェーのバルセロナでバイエルン幹部と秘密裏に接触したことが判明したから、さあ大変。

 「誰のおかげでこれだけ成長できたと思うんだ」とベテラン幹部が毒付けば、ファンも「お前がゴールを奪えないのは、バイエルン移籍後のことを考えてパワーを温存しているからだ」と、こちらもスタジアムで過激なスローガンを掲げた。実際、昨季のクローゼは後半戦でロクな働きを見せず、17試合でわずか3ゴールしかあげられなかった。それがバイエルン移籍後は絶好調なのだ。

 開幕戦のロストック戦でクローゼは25回と、チーム最少のボールタッチ数だったものの、シュート3本で2点を叩き込み、トニへのアシストも決めている。もちろんベスト11に選ばれた。一方のブレーメンの初戦はボーフムと2−2で引き分け。こちらはジエゴが先制PKとサノゴへのアシストを決めている。

 そして迎えた第2節。カードは何とブレーメン対バイエルン。DFの大崩れでブレーメンは0−4の屈辱的大敗を喫したのである。クローゼは前半の45分間だけプレーをした。ノーゴールだが、ブレーメンのファンは大喜びだった。何がって……、DFナウドのタックルを受け、“裏切り者”がピッチで悶絶したからである。その後、右ヒザの外側靭帯負傷により10日間の治療が必要であることが判明、22日のイングランド戦と週末のハノーバー戦欠場が決まった。ファンの反応がどうだったかは読者の想像にお任せする。

 それにしてもブレーメンは昨季終盤戦からのスランプを一向に抜け出せない状態が続いている。33節で格下フランクフルトに負けて、マイスター争いから脱落。今季開幕前のテストマッチはバーゼル0−2、リバプール2−3、リーグカップはバイエルンに1−4、そして2部パーダーボルンには1−2。実に4連敗でシーズンに臨んだのだ。

 チームの不調は、99年以来指揮をとるシャーフ監督が「こんな異常事態は初めてだ」と嘆いた大量の負傷者にある。開幕戦、ブレーメンは9人のレギュラーが欠場。補欠を含めると15人が故障者リストに名を連ねた。恐らく本来のチームに戻るにはあと2ヶ月間が必要になる。そうなるとベストメンバーを組めるのは10月末だ。

 幸いに司令塔ジエゴはケガをしていないが、こちらも厄介な問題を抱えている。その1つがコパアメリカ出場による精神的疲れと体調不良だ。大会初戦、メキシコ戦で先発出場したものの0−2で負けたことでレギュラー失格となった。ロナウジーニョとカカとの中盤争いに勝てず、精神的に相当落ち込んでいるのだ。ブレーメン幹部が「早く忘れろ」とアドバイスするものの、セレソンでいつまでも二流扱いされている自分に苛立ちを覚え、気持ちに張りがないようだ。おまけに、わずか13日間という短いバカンスでは十分に体力の回復が出来ず、スピードと運動量を求めるドイツ流サッカーに今後どれだけ対応できるか不安が残る。

 さらにジエゴにはもう1つ新たな問題が発生した。コパアメリカで彼は当初、契約通りナイキのシューズを履いていたのだが、途中からアディダスに変更した。報道によるとナイキの年額15万ユーロに対し、アディダスは25万ユーロを提示して契約を奪い取ったという。だがナイキ側は「契約は2010年まで続いている。明らかに違反だ」として、ナイキ欧州本社があるアムステルダムで裁判を起こした。判決が下りるのは8月23日。ちょうどチャンピオンズリーグ予備選第2戦の5日前である。

 ジエゴが裁判で負ければ損害賠償が発生するだろう。またチームが負ければ1800万ユーロの臨時収入を失うことにつながる。来年から6000万ユーロをかけてのスタジアム増築工事が始まるブレーメンにとっては、財政上でも成績の面でも次から次へと難題が降りかかっている。憂鬱になるのも当然だ。

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